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【夜間中学はいま】(13)漢字知らず履歴書も書けなかった 48歳、今が本当の自分

「待ってるから」

 ひらがなばかりの汚い字で日報を書くのは恥ずかしかった。アルバイトの学生が楽しそうに学校の話をしている姿がうらやましかった。「学校に行きたい。勉強したい」と切実に思う。ドリルを選び、古本屋で辞書を買って独学を始めたが、数学や英語がさっぱりわからない。漢字も相変わらず写しているだけだった。

 30代後半、公民館の学びの場に通い、夜間中学の存在を知った。豊中四中夜間学級に見学に行くが、当時は中学校を卒業した人の入学は認められていなかった。しかし数年後、不登校などで十分に義務教育を受けられなかった形式卒業者にも門戸が開かれ、45歳で念願の学校生活が再び始まった。

 不安だったのは人間関係だ。「人からやさしい言葉をかけてもらったことがなかったので、人と話すのが苦手で…」。だが、体験入学の期間に高齢の女性の生徒が積極的に話しかけてくれた。家庭の事情を話すと、「苦労したんやなあ」と受け止めてくれ、戦後の食糧難など自身の体験を語ってくれた。「自分だけが苦労したんやないとわかった」

 定時制高校に進学したその女性は「伊藤君、頑張りや。先に行って待ってるからな」と励ましてくれた。「その言葉と気持ちがうれしくて。今の自分がいるきっかけを作ってくれた、尊敬する先輩です」

 伊藤さんが困っていると、級友や先生が手を差し伸べてくれた。先生への不信感も次第に消えていった。

 入学4年目。「字がきれいになった」とほめられることが増えた。「意味も筆順もわかって書く文字は全然違う」と伊藤さん。名前を「寿」でなく戸籍表記の「壽」と書けるようになったこともうれしい。「自信が持て、学校でも仕事でも自分の意見を言えるようになった」と胸を張る。

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