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思想家・東浩紀さん新著『テーマパーク化する地球』 コミュニケーション「誤配」の可能性 いかに育むか

「今後は現在の話題ばかりを追うのでなく、古いテキストや芸術作品を考えることで人を『今』から引き離す場をつくりたい」と語る東浩紀さん (酒巻俊介撮影)
「今後は現在の話題ばかりを追うのでなく、古いテキストや芸術作品を考えることで人を『今』から引き離す場をつくりたい」と語る東浩紀さん (酒巻俊介撮影)
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 仏現代思想を代表するデリダ(1930~2004年)を論じた21年前のデビュー作『存在論的、郵便的』で若き俊英として注目されて以降、常に日本批評界の中心的存在として活躍してきた思想家で出版社「ゲンロン」前代表の東浩紀さん(48)。東日本大震災後に発表した作品を集めた新刊の哲学的エッセー集『テーマパーク化する地球』(ゲンロン)を軸に、会社経営をはじめとしたこの10年弱の試行錯誤と、その経験がどう東さんの思想に影響したのかを聞いた。(磨井慎吾)

 東さんは平成22年にゲンロンを創業して以後、大学などのポストを辞し、昨年末まで代表取締役社長として執筆活動やイベント主催なども含めた同社の運営に専念してきた。「やはり商売をするといろんな人たちに会うので、大学の中に閉じ籠もっているのとは全然違う頭を使うようになる。知見も広がったし、自分が何をやりたいのか見つめ直すことができた」と全力疾走した2010年代の感慨を語る。

 「ゼロ年代にはSNSなどインターネットが世界や政治を変えるという期待があり、僕もそれを信じてゲンロンを作ったところがあるのですが、だんだん冷めていった時代なのかなと思います。いくら情報流通が進んでも人間の愚かさは変わらないし、民主主義の限界も明らかになってきた」

 表題作のエッセーは、近年のグローバル化の進展により同じような生活スタイルを楽しむ消費者が全世界で大量に生まれた結果、世界中の土地が観光の対象、つまり「テーマパーク」になりつつある状況をめぐる思索だ。もちろん虐殺が行われた場所や巨大災害の被災地など、テーマパーク化に抵抗する土地も世界には存在する。

 だが、現代ではその負の記憶を後世に伝えようとする際にも、テーマパーク化の道を選ぶしかないという逆説が生じてしまう。すべてを商品化、数値化して交換可能にする資本主義が世界を覆う中で、そこに取り込まれきれないものをどう扱い、さらに郵便物の誤配のような計算外の出会いの可能性をいかに育んでいくか。本書の中心となる問題意識は、東さんが平成24年に提起したものの挫折した、東京電力福島第1原発の観光地化計画にもつながっている。

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