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【大阪特派員】御下賜品が語る弘法大師信仰 山上直子

 天皇や皇后が身近に使っていた品々を女官らに下賜することは、宮中の慣習だった。その品を東寺に寄進し法要を行うことで、皇室の安寧を願ったのである。

 「寄進されたのは、昭和9年の時点で亡くなられていた英照皇太后、明治天皇、昭憲皇太后と大正天皇の遺品で、22件が伝わっています。多くは工芸品ですね」

 例えば英照皇太后の「菊御紋煙草盆」は細工が美しい逸品。明治天皇の遺品(8件)の中には、大正天皇の生母・柳原愛子が寄進した銀製の「松鶴山水孔雀花瓶(まつつるさんすいくじゃくかびん)」などもある。明治天皇の長寿を願ったものだ。

 中には工芸展覧会などで明治天皇や皇后が気に入った作品を買い上げた「御買上品(おかいあげひん)」もあった。「美術品の生産を奨励するため、展覧会に足を運ばれて若手作家の作品を多く御買い上げになっていたようです」という。そこには、明治政府の殖産興業・産業奨励の政策が反映されている。

 また、亡くなった人だけでなく、当時健在だった昭和天皇と皇后、貞明皇后(大正天皇皇后)の“玉体安穏”を祈り、女官らがそれぞれの好み裂(ぎれ)(布)を持ち寄って作った「打敷(うちしき)」(敷物のこと)も寄進された。

 会場には、寄進した旧女官6人の記念写真も展示されていた。中には明治天皇の陵墓(伏見桃山陵)のある京都で冥福を祈りながら余生を送った女性もいたという。

 弘法大師の遠忌に当たり寄進された品々は、亡くなった天皇や皇后らの冥福と、健在の天皇・皇后らの健勝を願ったものだ。室町時代以来の信仰の姿を受け継ぎつつ、近代へと移りゆく弘法大師信仰の姿を伝える“証拠品”といえるかもしれない。(やまがみ なおこ)

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