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【アート 美】優れた芸術が訴える社会問題 彫刻部門 モナ・ハトゥム

 世界的に優れた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞。第31回の受賞者(彫刻部門)に輝いたのは、現代美術に刺激を与え続けている英国の芸術家、モナ・ハトゥム(67)だ。作品の根底にあるのは「自身の存在の危機的状況」。疎外された人間の苦しみやジェンダーの問題などといった社会的矛盾を、完成度の高いアートとして表現し続けてきたハトゥムの波瀾万丈(はらんばんじょう)の歩みを振り返る。(本間英士)

 1952年、パレスチナ人の両親のもと、レバノンの首都ベイルートで生まれた。フランス式の教育を受け、近年はロンドンとベルリンで創作活動を行うなど、多様なアイデンティティーを持つ。

 「私のルーツは中東。そのことで私は少し違った価値観を持っています。その利点は、物事を少なくとも2つの視点から見ることができること。その点で、私は極めて多岐にわたる異質な文化を経験しています」

 75年、英国旅行中にレバノンで内戦が勃発。家族と離ればなれのまま帰国できなくなり、自らの意志とは関係なく「亡命者」になった。ロンドンの美術大学に入学後、作品制作を開始。パフォーマンス・アートやビデオ作品を通じ、疎外された人間の苦しみや政治的抑圧、ジェンダーの問題-といった社会的矛盾を表現し続けた。

 その後、オブジェや空間全体を変える「インスタレーション」へと表現手法を移行。ロンドンの監視カメラ問題への関心から生まれた「見知らぬ身体」は、体内に内視鏡を入れ、自身の内部を円筒形の空間の床に映し出した作品だ。他の作品でも、時には毛髪や爪など、自分の体を“素材”として使用。観客の関心を集めてきた。

■ ■ ■

 ごく普通の家具や、ありふれた家庭用品を使った作品も多い。だが、ひとたび作品に生まれ変わると、そこから受ける感情は「不安」や「恐怖」。心に深い爪痕を残す。

 「日常的に使われていた物が、不必要で危険なものとして居場所を失う不条理な状況は、私たちが住む環境に対する多くの問題を提起します。最終的には、自分自身の周りの環境をどう思うかの問題に行き着くでしょう」

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