PR

ライフ ライフ

【親子でわくわく かがく絵本】「海」 想像力と未知なる世界

 昭和44年に福音館書店から刊行された『海』(加古里子(かこ・さとし)ぶん・え)は、前回紹介した『かわ』(昭和37年)の最後の海の場面から著者が構想を広げ、作られた絵本です。表紙をめくると、飛び込んでくる鮮やかな水色は何層にも分かれ、海の深さを感じます。そこに描かれる水中カメラを持ったダイバーと読み手が、だんだんと深海へと誘われていく感覚を覚えます。

 「みなさんは うみを しっていますか」という問い掛けに、子供たちは「知ってる!」「行ったことある!」と、これまでの自分の経験から知っている海を思い浮かべます。しかし、徐々に深くなっていく海の断面描写は、海を見たり感じたりする新たな角度や視点を与えてくれます。

 ページをめくると、目に飛び込んでくるのは沢山の生き物です。字が読めない子供でもじっくりと絵を見つめ、見つける面白さを味わいます。ページに描かれた生き物を数える子供もいます。自分たちの知らない所で、さまざまな生きる営みがあることに気づいていきます。海の深浅の断面の描写から、海の底には丘や盆地、長い山のつながりがあることに驚きます。また、海底開発は未来を生きる子供たちの想像力をかきたて、未知なる世界へと誘います。海の世界の不思議さに溢(あふ)れたこの本は、成長する子供が開くたびに、新たな発見と驚きが生まれます。

 著者は、この本の構想から完成までに7年の歳月を要しました。たくさんの文献を読み、専門家の話を聞き、何度も海岸に足を運んだそうです。巻末の解説には、各ページのさらに詳細な説明がなされています。

 そこには、子供たちに私たちが生きる世界の“本当の本当”を伝えたいという著者の思いがあります。加古里子さんは、知ることの喜びを共に味わう仲間として子供を認め、尊重しています。著書『未来のだるまちゃんへ』(平成28年、文春文庫)では、子供から多くのことを学んだという加古さんが、子供への希望を語っています。(国立音楽大教授・同付属幼稚園長 林浩子)

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ