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【中西進さんと行く 万葉集最果ての歌】宮城・福島 陸奥、原始の力に満ちて

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霧が立ちこめ幻想的な雰囲気を漂わせる安達太良山。万葉集にも詠まれ、日本百名山にも数えられる(彦野公太朗撮影)
霧が立ちこめ幻想的な雰囲気を漂わせる安達太良山。万葉集にも詠まれ、日本百名山にも数えられる(彦野公太朗撮影)
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 万葉集4500首の歌の中で、古代東北にまつわる歌はさほど多くはなく、10首程度との説もある。金の産出を祝う北限の歌に続くのは、陸奥(みちのく)の名山、安達太良山(あだたらやま)に男女の愛を重ねた、生命力あふれる歌だ。東北の万葉の風景を求めて、夏の終わりに、国文学者、中西進さん(90)と宮城、福島県を旅した。(横山由紀子)

 □安太多良(あだたら)の嶺(ね)に臥(ふ)す鹿猪(しし)のありつつも吾(あれ)は到(いた)らむ寝処(ねど)な去(さ)りそね 巻14-3428

ぶつかり合う愛

 福島県中央部にある安達太良山は標高1700メートル、日本百名山に選定され、高山植物が美しい花を咲かせる一方で、噴火口付近は月面を思わせるような荒々しい山肌がむき出しになった活火山だ。

 ロープウエーで山の中腹へと迫った。あいにくの雨模様だったが、深い霧が立ちこめる。「壮観な神秘の山だね」と中西さんも思わずつぶやく。この山を詠んだ3首は、いずれも恋愛の歌。「アダタという言葉はアイヌ語かもしれない。荒涼とした北の果てにある山に、男女の恋愛を詠った歌が残ることが非常に面白い」

 この歌は「東歌」で、もともとはその土地の民謡だったと考えられている。

 《安太多良(あだたら)の嶺(ね)に臥(ふ)す鹿猪(しし)のありつつも吾(あれ)は到(いた)らむ寝処(ねど)な去(さ)りそね》 巻14-3428

 (安達太良の山にやどる獣のように、私はいつまでもきまってお前を訪ねよう。寝所をかえるな)

 男女の関係を大自然に生きる動物に例えた歌だ。懐の深い山野には鹿や猪も多かっただろう。中西さんは、「それにしても自分たちを獣と同等にみるとはたくましい。これは生の人間同士がぶつかり合う愛なんです。きれい事の愛じゃない。頭でっかちな現代人とは違う。万葉集はそんな愛を今に伝えてくれます」

 □陸奥(みちのく)の安太多良真弓弾(あだたらまゆみはじ)き置(お)きて反(せ)らしめ来(き)なば弦着(つらは)かめかも 巻14-3437

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