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【編集者のおすすめ】『罪と祈り』貫井徳郎著 故郷、時代への郷愁抱かせる

『罪と祈り』貫井徳郎著
『罪と祈り』貫井徳郎著

 あなたは、父親のことをどれだけ知っていますか?

 物語は主人公・亮輔の父で元警察官、辰司の死から始まります。当初は事故と思われますが、側頭部に殴られた痕がみつかり、正義感あふれる父がなぜ殺されたのかに、焦点は絞られます。亮輔と幼なじみで刑事の賢剛は、死の謎を追い、賢剛の父・智士の自殺とのつながりを疑います。隅田川で死んだふたり。そして、時代を揺るがした未解決誘拐事件の真相とは。

 貫井作品の特徴のひとつは、理解不能な犯罪者や、近隣にいる怖い人を深く、丹念に描くことです。しかし、本作の登場人物の多くは、愛すべき市井の人々。普通の人たちの義憤から生まれた事件だからこそ、悲しく、はかなく、強く心を揺さぶります。

 もうひとつの注目は本作の舞台・浅草。何世代にもわたり濃密な人間関係が生きる場所を舞台にしたかったという著者の言葉通り、浅草の魅力が感じられ、誰もがもつ故郷への郷愁を抱かせます。自分にとって懐かしき場所、思い出深い人々を思い起こすキッカケになるかもしれません。

 書店員さんからは、「罪とは何か」「正義とは何か」と考えさせられたという感想を数多く頂きました。あわせて、昭和の終わりから平成後期までの時代の流れの中で、懸命に生きてきた者たちの息吹を感じてほしいと思わずにはいられません。

 ミステリー、エンターテインメント小説として間違いなく面白い作品。令和を迎えた今、必読の一冊です。(実業之日本社・1700円+税)

 実業之日本社文芸出版部 阿部雅彦

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