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【編集者のおすすめ】『ノモンハン 責任なき戦い』田中雄一著 「密室の戦争」に新たな光

『ノモンハン 責任なき戦い』田中雄一著
『ノモンハン 責任なき戦い』田中雄一著

 旧満州国と、モンゴル人民共和国の国境で起きた大規模な軍事衝突=ノモンハン事件から、今夏でちょうど80年になりました。当時、「精強無比」と謳(うた)われた関東軍はソ連・モンゴル連合軍に手痛い一撃を喫しました。

 この戦争を実質的に立案・指導した36歳の参謀、辻政信。陸軍士官学校、陸軍大学校を優秀な成績で卒業し、自ら最前線に飛び込むこともいとわない勇将で、軍内で一目も二目も置かれる存在でした。

 辻は、満蒙国境で存在感を増すソ連軍に先制攻撃を仕掛けますが、その備えは厚く、兵站も万全で、最新式の戦車をずらりと並べ日本軍に砲弾の雨を降らせました。

 100歳を超える元兵士・柳楽林市さんの証言は凄絶(せいぜつ)です。

 「大砲の弾が直接当たって、いままでそこにおった影が、人が、サーと消えてしまう。今度は俺の番だって気持ちです。悲愴(ひそう)感といいましょうか」

 2万人もの死傷者を出した関東軍は戦後徹底的に情報を隠匿し、事件は長く「知られざる戦い」「密室の戦争」と言われてきました。

 昨年放送されたNHKスペシャル「ノモンハン 責任なき戦い」は、現地取材と音声記録の発掘によってこの戦争に新たな光を当てました。本書は、その書籍化です。

 戦後、日本陸軍は、敗因を「特種戦」のためとして現実から目を背け続け、2年後の昭和16年12月、太平洋戦争へと突入していきます。

 日本型組織のゆがみがここに凝縮され、一読、深く嘆息せずにはいられません。(講談社現代新書・900円+税)

 講談社企画部 淺川継人

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