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【ビブリオエッセー】世界が違って見える 「道頓堀の雨に別れて以来なり-川柳作家・岸本水府とその時代」田辺聖子(中公文庫)

 6月に亡くなった田辺聖子さんの労作を本紙で知り、興味が湧き、読みました。岸本水府のみならず多くの川柳作家を明治、大正、昭和にわたって追跡しています。

 連歌から派生した川柳はもともと、五七五でどれだけ面白おかしく、気の利いたことがいえるかを競う言葉遊びでした。水府はランク付けと懸賞を伴う庶民の娯楽であった“伝統的川柳”がはらむ弊害を危惧し、「本格川柳」の確立を目指しました。五七五の中にどれだけ世相を写し取れるか、思いを込められるかを追求したのです。

 川柳は選句にも多大の労力を要します。水府の選句は月2万にも及んだそうです。下品なもの、ユーモアや救いのないものをまずはねますが既出のものは論外。良き作者、選者、編者、発表媒体が一体となって作り上げる必要があり、水府はそれを成し遂げたのです。川柳を介して誰もがわかり合える。世界が違って見える。世界が変わる…。

 水府はコピーライターの先駆者でもありました。川柳で磨かれた言語感覚は福助やグリコなどでの宣伝、広告で威力を発揮。たびたび登場する川柳作家、雉子郎(きじろう)も川柳で培った文学的素養と人脈がなければ吉川英治となることはなかったでしょう。

 連歌などの言葉遊びは日本の伝統であり、誰でも十や二十は知っている俳句、川柳は日本人の心とも言えます。 

 小学校から英語やプログラミングを教えるよりまず日本語。俳句や川柳を作らせ、鑑賞する方がよほどよい教育になると思うのですが。

 大分県中津市 宮原道則69   

【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

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