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【高見国生の認知症と歩む】(22)不安を和らげるため“名優”に

 認知症(とくにアルツハイマー病)の人の特徴的な症状である物忘れは、新しい経験から過去に遡(さかのぼ)って忘れていくために、何十年も昔に戻っているようなことがあります。80歳の人が、「私は40歳」などと言ったり、自分の子供はまだ4、5歳だと思っていて、大人になった息子が分からなかったりするなどです。

 2年前から老人病院に入院している93歳のA子さんは最近、「自分は結核だから無理に退院させられる」と心配しはじめて、とても落ち着かない状態になり、他県に住む息子の妻であるK子さんに頻繁に電話してきます。K子さんは「お義母さんは結核ではありませんよ」と答えますが、いくら説明しても納得せず、すぐにまた同じ電話がかかってきます。遠く離れているため簡単には行くことができず、主治医から説明してもらいましたが、それでも効果はありませんでした。

 A子さんは若いころ結核になり、療養生活を送った経験があるそうです。K子さんは、「お義母さんの妄想」といいますが、義母は結核でつらい思いをしたころに戻っているのだと考えられます。

 どうすれば義母を落ち着かせることができるのでしょうか。義母は「退院させられる」と心配しているのですから、退院しなくてもいいのだと思ってもらえばいいのです。だから、「この病院は結核でも退院しなくてもいいのですよ」と言ってみてください。

 「そのような嘘(うそ)は言えない」と考える人もいますが、これは認知症の人の不安を和らげる対応のひとつの方法です。以前、NHK介護百人一首に、「今日は母 昨日は娘 明日は何 介護の日々は名優となれ」(埼玉県・安藤幸男さん作)というのがありました。この句もそのことを教えています。

【プロフィル】高見国生

 認知症の養母を介護し、昭和55年に「認知症の人と家族の会」を設立。平成29年まで代表を続け、現在は顧問。同会は全国に支部があり、会員数約1万1千人。

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