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光が溶け込む絵画 伊庭靖子の超絶技巧

「Untitled 2019-03」 作家蔵(協力:MA2 Gallery) 撮影:植松琢麿
「Untitled 2019-03」 作家蔵(協力:MA2 Gallery) 撮影:植松琢麿

 展示空間は絵画から発せられる透明な光と静けさに包まれている。東京・上野公園の東京都美術館で開かれている「伊庭(いば)靖子展 まなざしのあわい」の会場だ。

 画家、伊庭がモチーフにしているのは特別なものではない。器や寝具といった日常にある物。柔らかい布や硬い陶磁器など質感とともにとらえる。シーツや枕などの寝具を描写した初期の作品「Untitled 2004-03」は、光と影の陰影により布の微妙な凹凸(おうとつ)が現れる。やさしく柔らかで、手で触ったような感覚を味わう。

 伊庭は昭和42年生まれ。大学で版画を学んだが、徐々に絵画制作に移行した。手法も独特で、自らが撮影した写真を元にして描いていく。しかも筆で塗るのではなく、やさしくたたくように繊細に色を重ねていく。筆の痕跡を見せない画面は、一見すると写真作品のような印象を与える。作者は写真で得た情報の中から描きたいものだけをすくい上げて絵画世界を構築する。

 近年、花器などを透明なアクリルボックスに入れた作品を制作。最新作は「Untitled 2019-03」。手のひらサイズの陶器を入れ、東京都美術館内で撮影した。アクリル板には館内の風景がぼんやりと映り込み、光の中に溶け込みながら陶器が現れる。アクリルボックスを用いたことで、光などのさまざまな要素が絡み合い画面が複雑化。より絵画的な空間構成を実現している。

 展覧会タイトル「まなざしのあわい」の「あわい」とはあいだの意味。絵の中の物たちと見る者のあいだにはいったい何があるのだろうか。見ることや感じることの意味を考えさせる。

 10年ぶりとなる美術館の個展では、絵画や版画、最新作の映像作品など約50点で創作の流れをたどる。(文化部 渋沢和彦)

 10月9日まで、月曜休、一般800円。問い合わせは同館03・3823・6921。

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