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【この本と出会った】鉄道ライター・杉山淳一 『時刻表2万キロ』

■「乗り鉄」が目ざす場所

 私のひとり旅の始まりは5歳だった。自宅から幼稚園まで、わずか1キロほどの徒歩。たぶん母が後ろからついてきたと思うけれども、ひとりで行けた達成感を覚えている。

 小学校に上がると、父方の祖父の家にひとりで行った。麻布十番商店街の計器屋だ。東急池上線の洗足池駅から電車で五反田へ。そこからバスに乗り換えて一の橋へ。祖父はとても喜んでくれた。何度も通うと慣れて、ドキドキも達成感も薄れる。そのうちに洗足池駅の路線図を見上げ「全部乗りたい」と思うようになった。

 『時刻表2万キロ』は小学6年生の時に図書館で見つけた。びっくりした。国鉄の鉄道路線にすべて乗った人がいた。用事があって乗るではなく、全部乗るために乗る。知り合いのいないところへ行って、ご飯を食べて、泊まって、見知らぬ人と会話して…。ワクワクする。とても楽しそうだ。

 ボクは東急電鉄に全部乗ろうと思っていた。しかしこの人は国鉄。つまり日本全国だ。スケールが違う。ならばボクも全国を目指そう。まずは東京だ。当時のボクは鉄道雑誌や時刻表を熟読しており、種村直樹著『鉄道旅行術』がバイブルだった。そこで「東京ミニ周遊券」を使えば東京近郊の国電に乗り放題と知った。しかしこのきっぷは東京に行く人のためのきっぷで、都内では売らない。最も近い発売駅は静岡だ。小学6年生が静岡駅まできっぷを買いに行き、帰りは急行「東海」に乗った。それから約1週間で有効区間の全路線を踏破した。

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