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【ロングセラーを読む】『自省録』マルクス・アウレリウス著、神谷美恵子訳 時代超える普遍性と人間臭さ

マルクス・アウレリウス著、神谷美恵子訳『自省録』(岩波文庫)
マルクス・アウレリウス著、神谷美恵子訳『自省録』(岩波文庫)

 少し前、書店の週間ベストセラーに『自省録』が入っていて驚いた。著者は古代ローマの皇帝、マルクス・アウレリウス(121~180年)。そういえば、2月発売の漫画『ミステリと言う勿(なか)れ』(田村由美著)4巻でも引用されていた。2千年近く前に書かれた言葉が、なぜ現代の日本でも読み継がれるのだろうか。

 政治・軍事のトップとして広大な領内を統治した著者。本書は戦場の陣中などで、自分に向き合うために記した文章を集めたものだ。難解な文章や単語もあるが、今読んでもスッと心にしみる文章が多い。

 〈あたかも一万年も生きるかのように行動するな。(中略)生きているうちに、許されている間に、善(よ)き人たれ〉

 〈もっともよい復讐(ふくしゅう)の方法は自分まで同じような行為をしないことだ〉

 折しも当時は、ローマの統治にほころびが目立ち始めた時期だった。相次ぐ天災、隣国との戦争、異民族の侵略…。そのたびに責任感の強い皇帝は各地に赴き、奮戦を続けた。

 著者はもともと病弱で、皇帝より哲学者になりたかった節が見受けられる。だが、皇帝になる以上は強くなろう、易(やす)きに流されないようにしよう、と自分を戒め続けた。その克己心が昔から多くの人の心をつかみ、南アフリカのマンデラ元大統領をはじめ近現代の指導者にも愛読者は多い。

 ただ、現代の一般読者に最も響くのは、著者の人間臭い部分かもしれない。

 〈もう沢山だ。このみじめな生活〉など自身の境遇への愚痴。人間関係には我慢が必要なこと。虚栄心や承認欲求との付き合い方。腹が立ったとき、早起きがつらいときに自分に言い聞かせる言葉…。歴史に名を刻んだ皇帝も現代人と似たことで悩んだのかと思うと、少し気が楽になる。時代を超えて通用する普遍性があり、折につけ読み返したくなる一冊。

 〈なによりもまず、いらいらするな〉

 〈あらゆる人びとにたいして(中略)健全な言葉づかいをすること〉

 〈行動においては杜撰(ずさん)になるな。会話においては混乱するな。(中略)人生においては余裕を失うな〉(岩波文庫 860円+税)

 本間英士

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