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エネルギーミックスで中東リスクに備えを 原子力の活用不可欠

ホルムズ海峡付近で攻撃を受けて火災を起こし、煙を上げるタンカー(AP)
ホルムズ海峡付近で攻撃を受けて火災を起こし、煙を上げるタンカー(AP)
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 米国とイランの対立が激化し中東情勢が緊迫化するなか、日本のエネルギー安全保障の脆弱(ぜいじゃく)さが改めてクローズアップされている。発電などに使われるエネルギー源のうち、どれだけ自国内で確保できたかを示すエネルギー自給率は2017年で9.6%(図1)と、先進国で最低レベルにある。6月に日本のタンカーが攻撃を受けたホルムズ海峡が封鎖されるなど中東有事が勃発すれば、エネルギー調達や電力供給に支障が及び、私たちの暮らしや経済活動に大きな影響が出るのは避けられない。

図1 主要国の1次エネルギー自給率比較(2017年)
図1 主要国の1次エネルギー自給率比較(2017年)
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危うい火力依存8割

 サウジアラビアやアラブ首長国連邦、イランなど中東産油国に囲まれたペルシャ湾の出入り口であるホルムズ海峡。最も狭いところで30キロ余りしかないこの海峡を毎日、世界の消費量の約2割に相当する原油を積んだタンカーが航行している。エネルギー資源のほとんどを輸入に頼る小資源国の日本にとって、まさに“生命線”といえる。

 日本は輸入原油のうち約87%を中東に依存し、液化天然ガス(LNG)も約22%を中東に頼っている。米国とイランの軍事衝突などで航行不能になれば、エネルギー調達が滞り、原油などのエネルギー価格が急騰するのは確実だ。

 日本は国民生活が大混乱に陥った1973年の第1次オイルショック以降、エネルギー構造の転換に取り組んできた。特に暮らしに欠かせない電力供給ではLNGへの転換や原子力発電の活用を進め、石油への依存度は大きく低下した。

 しかし、2011年の東日本大震災後、原子力発電所の再稼働が進まず、LNGや石炭、石油といった化石燃料を使う火力発電の比率が大幅に上昇している。発電力に占める原子力の比率が震災前の10年度の約29%から17年度は約3%に低下する一方で、火力は10年度の約62%に対し17年度は約81%を占めた。火力比率はオイルショック時の約80%を上回っており、石油火力の比率が低下したとはいえ、中東有事のリスクは小さくない(図2)。

図2 日本の電源構成
図2 日本の電源構成
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安全保障の構築急務

 有事への備えである安全保障の観点から重要となるのが、どれだけ自国内で賄えるかを測る自給率だ。その低さが問題視されている食料自給率は2017年が38%だが、エネルギー自給率はその4分の1しかない。震災前の10年は20.3%あったが、半分以下に低下し多くのエネルギーを消費する先進国で最低レベルにとどまっている。

 最大の原因は、いったん燃料を入れると1年以上発電でき、使用済みの燃料を再利用できることから「準国産エネルギー」と位置付けられている原子力発電の比率の低下だ。

 日本は30年度の電源構成について、火力比率を56%程度とする一方で、原子力を20~22%程度、再生可能エネルギーを22~24%程度とすることを目指している。安全保障の観点から重要となるエネルギー自給率を高めるためにも、燃料を海外に頼る火力発電の比率を低減し原子力、再生可能エネルギーをバランスよく組み合わせる「エネルギーミックス」が不可欠だ。

 ただし、天候等に左右される再生可能エネルギーは安定供給に課題があり、有事の備えとしては、原子力の活用がより重要となる。ホルムズ海峡の封鎖が懸念されるなか、安全性が確認された原子力発電所の早期再稼働の必要性について冷静に考えてみることが求められている。

最低レベルのエネルギー自給率、忍び寄る国家存続の危機

専門家に聞く 外交評論家・岡本行夫氏

外交評論家・岡本行夫氏
外交評論家・岡本行夫氏
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 中東は人種、宗教に加え、石油利権がからみ世界で最も不安定な地域だが、米国のトランプ大統領による恣意(しい)的な対イラン政策によって不安定さが激化し、容易には解消されない状況にある。ホルムズ海峡が封鎖される事態になればむろんのこと、そうでなくても、航行に不安が生じ世界のエネルギー供給に影響が出れば、間違いなくエネルギー価格は跳ね上がる。日本にとっては死活的な問題だ。

 経済発展に重要なエネルギーの自給率が先進国で最低レベルにあるということは、日本は脆弱な立場におかれており、世界で最も大きな影響を受けることを意味している。

 オイルショック以降、日本は中東への依存度を下げる努力を続け、特に原子力発電に活路を求め、その比率を高めてきた。特定の電源への依存度を10%下げるには20~30年かかる。しかし、東日本大震災という大惨事が起き、原子力の比率が低下し化石燃料の比率が再び上昇し、時間が数十年逆戻りしてしまった。リスクはオイルショック当時と同等以上といえる。

 安全性を確認した上で原子力を活用するしかないのが日本の国情だ。2030年度の電源構成の目標はエネルギーミックスの理想型を示したもので、これを目指すしかない。忍び寄ってくる国家存続の危機に対し、政府が勇気を持って正面から立ち向かい、国民をリードしていくことが必要だ。

【プロフィル】おかもと・ゆきお 1968年外務省入省。91年に退官し、同年岡本アソシエイツを設立。橋本内閣、小泉内閣で首相補佐官を務める。外務省と首相官邸で湾岸戦争、沖縄問題、イラク復興、日米安全保障、経済案件などを担当した。

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