【話の肖像画】ファーストリテイリング会長兼社長・柳井正(70)(11)平成は「経済敗戦の時期」
〈30年もせず世界都市になった中国・上海を引き合いに、著書『現実を視よ』(PHP研究所)では、「資本主義の精神」を忘れた日本人を嘆いた〉
その昔、にぎわいを見せていたその地方都市は、1960年代に起こったエネルギー革命の変化の波にさらされることになる。主力エネルギーが石炭から石油に移行したあおりを受けて、炭鉱は瞬く間に閉山に追い込まれた。炭鉱労働者で成り立っていた町からは、徐々に住民が去っていき、小学校も廃校。やがて町全体が消えてなくなった。閉山によって、その都市の人口は激減した。山口県宇部市。私の生まれ故郷である。
〈日本はバブル経済がはじけた1990年代に「夢からさめ、覚悟を決めるべきだった」とも訴えた〉
成長しなければ即死する-。社会の変化は、あるきっかけによって唐突に起こる。そして成長から見放されることは、すなわち「死」を意味する。私は身をもって、その事実を学んだ。これこそ、私の原体験である。
〈かつて、平成21年からの約3年間、政権を担った民主党については、「定見も、政策担当能力もなかった」と指摘した。「貧しくてもよい」と軽々しく口にする人は、「本当の貧困」を知らない、とも〉
今振り返って考えても、当時の民主党政権については「もう、ぜんぜん」という感じですよ。安倍政権につきましては、ノーコメントにしておきましょう。
〈父の等氏は、義理人情に厚く、地元選出の国会議員の後援会長なども務めた。だが、自身は支持をする政党も政治家もいないという〉
父などを見ていて、政治への嫌悪を無意識に植え付けてしまったかもしれない。日本の政治の現状を見ていると、僕が中学生の頃に嫌悪し始めた当時から、全く進歩していません。
〈公的年金や社会保障制度には批判的な意見を発信するなど、政策に関する私見も表明してきた〉