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【忘れられた同胞・フィリピン残留2世(番外編)】復讐劇、愛国行進曲…運命に翻弄された人々の物語

 男性がその後どうなったのか、誰も分からない。ただ、ナルシサさんの家族の女性は「彼は私たち家族の英雄なんです」と語った。親が殺され、娘の夫が復讐する-。現代の日本では及びもつかない凄絶な世界が、そこにはあった。

望郷のメロディー

 フリオさんとともに連載(中)で取り上げた、マツイチさんと一緒にゲリラに殺害された岩尾久衛(きゅうえい)さんの娘、ホセフィナ・イワオさん(82)。日本語が話せない彼女が取材中、口ずさんでいたメロディーがあった。戦前の日本で広く歌われた「愛国行進曲」だ。

 「見よ東海の空あけて/旭日高く輝けば/天地の正気はつらつと/希望は踊る大八洲(おおやしま)-」

 ホセフィナさんがまだ幼かったころ。優しかった岩尾さんの人柄を慕い、家には多くの日本人やフィリピン人が遊びに来ていた。そんな友人や親戚が集まる食事の席で、ある日本人がこの曲を歌い始めると、岩尾さんが突然、ぽろぽろと涙を流した。

 周りのフィリピン人たちは驚き「そんなに恋しいなら日本に帰ってはどうだ」とからかっていたという。新天地を求めて旅立っても、心はいつも日本を思っていたのだろう。

 岩尾さんとマツイチさんが殺害された場所には、セメントでできた2人の墓が建てられている。フリオさんによると、墓は70年ごろ、現地を訪れた日本人が墓石代として現金を寄贈してくれてできたという。

余儀なくされた「仮の名前」

 パラワン州の中心地・プエルトプリンセサ市の市街地を北に行くと、「35キロ地点」と呼ばれる荒野がある。戦時中、反日ゲリラに拘束された多くの日本人移民がここで穴を掘らされて殺害され、穴に捨てられたという慟哭の地だ。

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