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ドリトル先生に憧れて 生物学者・福岡伸一さん 「読み聞かせしやすい文体に」 

子供の頃から読み返してきた「ドリトル先生航海記」の魅力を語る福岡伸一さん(酒巻俊介撮影)
子供の頃から読み返してきた「ドリトル先生航海記」の魅力を語る福岡伸一さん(酒巻俊介撮影)

 子供のころの幸せな読書体験が、その後の人生の方向を決めることがある。ベストセラー『生物と無生物のあいだ』などで生命や生物の魅力をわかりやすく伝える生物学者、福岡伸一さん(59)はその一人だ。英国の名作童話「ドリトル先生」シリーズに夢中となり、動物の言葉がわかる名医、ドリトル先生に憧れ、研究者の道を歩んだ。自ら挑んだ新訳では若々しい主人公像を紡ぎ出し、読み聞かせを念頭に置いた簡潔な文体で新しい読者を獲得している。

 「最初のヒーローは(昆虫学者の)ファーブル先生だった。自然をありのままに観察する立場は生態学的にはおもしろいが、ちょっとしんきくさくて。そんなときに小学校の図書館でドリトル先生の本と出会い、夢中になった」

 ドリトル先生シリーズは、著者のヒュー・ロフティング(1886~1947年)が第一次世界大戦に従軍中、自分の子供たちに書き送った物語が原型となり、全12巻に及ぶ。福岡さんが読み始めたのは2巻目の「航海記」だった。

 三人称の文体で書かれた第1巻の『アフリカ行き』に比べ、『航海記』は貧しい靴職人の息子、トミー・スタビンズ君という語り手が初めて登場し、ドリトル先生の思い出を語るスタイル。福岡さんは「シリーズ化にあたっての作者の素晴らしいアイデアだった」とたたえ、「スタビンズ君が語る物語はがぜん生き生きとし、航海記と最初に出会えたのは読書体験として非常に良かった」と振り返る。

 「航海記」を今でも読み返す福岡さんが、「あらゆる物語の中で最も美しく描かれている」というのが、ドリトル先生とスタビンズ君との出会いの場面だ。

 突然の夕立の中、スタビンズ君が家路を急ぐため顔を上げずに走っていると、向こうからやって来たドリトル先生のおなかにぶつかって互いに尻餅をつく。謝るスタビンズ君に「君も不注意だったが、わたしも不注意だった」とわびるドリトル先生。家に呼んで服をかわかし、夕焼けの中、スタビンズ君を自宅まで送る-。

 「ドリトル先生は小太りで脱力系だが、少年に対しても、貧しい人に対しても、違う文化をもった人たちにも公平に振る舞う。理想的な大人のモデルであり、物語を読み終えた少年少女は、すっかりスタビンズ君になりきっている」

 福岡さんの“なりきり”熱は半端ない。川岸に腰をかけ、足をぶらぶらさせるスタビンズ君の挿絵をヒントに、実際に英国を旅して似通った場所を見つけ、岸壁に腰をかけてスタビンズ君になりきったのだ。

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