PR

ライフ ライフ

綿矢りささん「大人の女性同士の本気の恋愛」で新境地

作家の綿矢りささん
作家の綿矢りささん

 大人の女性同士の深い恋愛を描いてみたい-。そんな願いを抱き続けてきた。

 2人の女性は、ともに魅力的で美しい。25歳で出合ったときには男性の恋人がいた。現在の日本で同性婚は認められず、子孫を残すこともかなわない。それでも2人は狂おしいほどに相手を求めてやまない。真っすぐで怖いほど真剣だ。

 「初めに題名(『生(き)のみ生(き)のままで』)を思いつき、それに合う小説を書こうと思った。好きになった相手と真摯(しんし)に向き合い、時代の中で必死に生きようとする2人の女性の姿です」

 過激な性描写がふんだんに盛り込まれているわけではない。だが、ときにハッとさせられる女性ならではの表現がちりばめられている。原点となる作品(『ひらいて』、平成24年)を20代で書いた。好きな男の子の気を引くために交際相手の女の子を誘惑する女子高生の物語。相手の女の子は、次第に深みへとはまり込んでゆく。

 「このときは、本来の目的(恋のさや当て)が違う設定でしたし、その場面も短い。もっともっと深い、大人の女性同士が本気で恋愛対象となるような物語を書いてみたいと思った。2人は男性とも交際した経験がある。そのときに出合い、好きになった人が『女性』だったのです」

 これまで書いてきた作品とはテイストが違う。

 17歳のデビュー作『インストール』(平成13年)は、学校生活からドロップアウトした女子高生が、小学生の男の子と一緒になってネット上で風俗嬢にふんする話。19歳の史上最年少で芥川賞を受賞した『蹴りたい背中』(15年)は、やはり学校になじめず独りで生きていく女子高生と“おたく少年”の不思議な交流を描いている。

 実は、10代で人気作家に躍り出たゆえの苦悩があった。学業との両立や過度の期待へのプレッシャーから書けなくなった時期も。「『書かなきゃ』と思うんですけど、緊張しちゃって、自分でも何が書きたいのか、訳が分からなくなってしまう。下積みもなく、経験値が足りなかった」

 苦しい時期は大学卒業後4、5年も続いた。

 3年前、故郷の京都を舞台にした『手のひらの京』を出版した。これも、従来の持ち味とは異なる作品だ。結婚願望が強い長女、男性との交際に奔放な次女、大学院で研究にいそしむ三女。「姉妹3人ともに少しずつ自分自身が投影されている」という。

 三女は、京都の街に愛着を感じつつ、東京へ出てゆく。

 「私も同じ思いで上京してきたのです。京都にいたら幸せだけど、居続けると難しいんだって」

 今も話し言葉となると、関西弁が出る。それも“ネーティブ”感たっぷり。京都への思いは尽きない。

 書けない苦境から抜け出すことができたのは、「結局、私が面白いと思ったものを書くしかない」と開き直れたからだ。飾るのでも、ウケを狙うのではなく、自分の思いを率直に文章にした作品で読者に感動を与えたいと思う。

 30代半ばになったいま、まさしく“生のみ生のままで”-である。(文化部 喜多由浩)

わたや・りさ 昭和59年、京都市生まれ。早稲田大学教育学部卒。高校在学中の平成13年に『インストール』で文藝賞受賞。15年発表の『蹴りたい背中』で翌年、芥川賞を受賞。当時19歳で最年少記録を更新した。24年『かわいそうだね?』で大江健三郎賞受賞。他の作品に『ひらいて』『手のひらの京』など。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ