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【ビブリオエッセー】何度も読み返す人生の指針 「海からの贈物」アン・モロウ・リンドバーグ著 吉田健一訳(新潮文庫)

 年を重ねてご縁ということを考えるようになった。一冊の本との出会いにもご縁があると思う。私はリンドバーグ夫人の『海からの贈物』にご縁を感じている。

 50歳を目前に下の娘が高校生になったので、20年以上休んでいた仕事を再開し、社会人と主婦の“兼業”にアップアップしていた私。そんなころ、この本に出会った。

 休日を島で過ごせるリンドバーグ夫人っていいなぁという軽い気持ちで読み始めた。気分をリセットするための読書だった。ところが読み進めるうちに、これは気分転換に読むような一冊ではないと感じてくる。薄い本だが読めば読むほど奥深い。これこそ一生かけて何度も読む価値のある本なのではと…。

 自身も女性飛行家の草分けで文筆家でもある著者。だがそんな経歴には一切ふれず、一人の妻として、母として、女性として生活や人生を語っている。いわば浜辺の思索。各章は拾ったほら貝や日の出貝など貝殻の話から広がる。巧みな語りだ。

 この本に出会って15年。私の人生もいろいろあったけれど、いっぱい考えたり悩んだりしたその時、いつもこの本を読んだ。はっきりした答えは出ないがシンプルに、日々手を抜かず生活する。

 「浜辺での生活で第一に覚えることは、不必要なものを捨てるということである」

 海が教えるのは忍耐や信念や寛容、質素や孤独…だという。忘れがたい言葉の数々。そして私も今、海辺に旅したら必ず、お気に入りの貝殻を一つ見つけて、持ち帰る。

 奈良県生駒市 樋口和子 63

【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

 投稿はペンネーム可。600字程度で住所、氏名、年齢と電話番号を明記し、〒556-8661産経新聞「ビブリオエッセー」事務局まで。メールはbiblio@sankei.co.jp。題材となる本は流通している書籍に限り、絵本、漫画も含みます。採用の方のみ連絡、原稿は返却しません。二重投稿はお断りします。

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