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【書評】作家・伊東潤が読む『怪しい戦国史』本郷和人著

『怪しい戦国史』本郷和人著(産経新聞出版)
『怪しい戦国史』本郷和人著(産経新聞出版)

■歴史の敷居低くする快著

 歴史の世界を渉猟していると、「えっ、そうなの?」ということによく出会う。理屈に合わないことや理解し難いことが出現するのだ。そうした引っ掛かりを元にして、「実は、こうだったんじゃないの」という解釈を施して物語にしていくのが、私たち歴史小説家の仕事だ。しかし歴史研究家の先生方は、何か不合理なことがあっても定説を持ち出し、「それはこういうことです」と、もっともな解釈を垂れるのが常だ。

 ところが本書は、東京大学史料編纂(へんさん)所教授という権威ある地位(?)に就いている本郷氏自らが、定説や常識に対し、「それって変じゃない」と言っている希有(けう)な本なのだ。

 いかにも本郷氏だと思うのは、定説だけでなく新説なるものにも疑義を呈し、「それは定説の方が正しい」と言っている点だ。さすがの平衡感覚だ。

 本書は「桶狭間の戦い、そもそもの理由は?」「謙信『車がかりの陣』は兵種別編成?」「信玄・謙信の権力はどの程度だったか」「そもそも武士が籠城する目的は?」「福島正則『暴れ者』理解は正しいか」「三成はなぜ『忖度(そんたく)』できなかったか」といった歴史好きなら誰でも興味を持つテーマを取り上げ、「それって変じゃない」と言いつつ常識・定説・新説などに批判を加え、自説を述べるという展開の歴史ウンチク本の一種だ。

 歴史を学ぶ上で、思い込みや固定観念を取り払うことがいかに大切かを、本書は教えてくれている。

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