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【話の肖像画】バレエダンサー・熊川哲也(47)(5)「ソリストへの道」懇願

 まだ若く、他のダンサーの手前もあるということで、最も下のランクのアーティスト、つまりコール・ド(群舞)を踊る一人として契約しました。ただ契約の際、芸術監督から「ソロを踊ることが多いだろう。すぐにソリストに昇格させるから」と話があり、初舞台を踏んでから2週間後には、早くもソロを踊る機会が訪れました。

 〈ロイヤル・バレエ団のシーズンは10月に始まり、翌年の7月に終わる。一度契約すると原則として契約は毎年、自動更新されるが、昇格や昇給のときは改めて契約を結び直す〉

 その後もソリスト役を踊り、世界的なダンサーのルドルフ・ヌレエフが踊った重要な役をもらうこともありました。バレエ団と契約してから5カ月後、芸術監督からオフィスに呼ばれ、入団時にかけていただいた話もありましたので、契約更新でソリストに昇格するものと信じて喜び勇んでオフィスに向かいました。

 ところが「来シーズンはファースト・アーティストに昇格」と告げられたので悲しくなり、当時はまだたどたどしかった英語で「ソロを踊っているのだから、ソリストにしてください」と必死に訴えました。その姿に気おされたのか、芸術監督は一瞬の沈黙後に机をポンとたたいて、「分かった。ソリストにしよう」と言ってくれました。

 後にこのエピソードを人に話したら、「芸術監督を相手に、よくそんなことが言えたものだね」とあきれられたり、感心されたりしました。(聞き手 水沼啓子)

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