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「核の番人」の公正・独立に心砕く 天野氏への哀悼広がる

記者会見するIAEAの天野之弥事務局長=6月、ウィーン(共同)
記者会見するIAEAの天野之弥事務局長=6月、ウィーン(共同)

 【ベルリン=宮下日出男】22日に死去が発表された国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)の天野之弥(あまの・ゆきや)事務局長は世界の核不拡散体制が揺れる中、その中核を担う組織を唯一の被爆国出身者として率いた。「核の番人」に重要な公正と独立性に心を砕き、加盟国からはそうした「プロ」の業績をたたえる声が相次いだ。

 AP通信によると、天野氏が死去したのは18日。72歳だった。IAEAは遺族の希望に添って、葬儀が終えるのを待って公表したという。加盟国などの要人らは哀悼の意を次々と表明した。

 欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表は天野氏の手腕を「並外れた献身とプロ意識、最大に公平な手法」と称賛。ドイツのマース外相は天野氏が「最大限の献身と独立性を持って責任を果たした」との声明を出した。

 「広島、長崎の経験を有する国から来ており、核兵器の拡散に立ち向かう」。天野氏がそう所信表明して事務局長に立候補したのは約10年前だ。南アフリカ出身の対立候補との争いは激しく、選出は難航した。

 背景には核兵器保有を米英仏露中の5カ国と定めた核不拡散体制の下、すでに原子力技術を持ち、不拡散を重視する先進国と、原子力利用の制限を嫌う途上国の反目があったとされる。当時のエジプト出身のエルバラダイ事務局長も米国との軋轢(あつれき)が目立った。

 当時は北朝鮮が2度目の核実験を実施し、イランの核問題もすでに課題となっていた。天野氏は先進国と途上国を超えた調整役という重責を担い、核不拡散の課題への対処のためにも、IAEAの中立と公平性を保つことに気を配った。

 最近では米国が離脱したイラン核合意で、安倍晋三首相が米側の依頼に応じてイランを訪問する際、仲介への期待を尋ねた報道陣の質問に「政治」と一線を引くとして回答を自制。イランの合意逸脱行為を「違反か」と問われると、判断するのは合意当事国で、IAEAの任務は客観的な査察だとの見解を示した。

 核合意が存続の危機に直面する中、その取り扱いは極めて繊細だ。米メディアは天野氏について、「特に米国の離脱後の対応は冷静で、プロフェッショナルだった」との現地外交関係者の見解を伝えた。

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