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【日本人の心 楠木正成を読み解く】第2章 時代の先駆者が伝えるもの(12)

正成を祭る湊川神社にある「非理法権天」の旗=神戸市中央区(沢野貴信撮影)
正成を祭る湊川神社にある「非理法権天」の旗=神戸市中央区(沢野貴信撮影)
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■「非理法権天」が意味するもの

 楠木正成(くすのき・まさしげ)といえば、「七生報国(しちしょうほうこく)(7度生まれ変わっても国に尽くす)」や家紋である「菊水」といった言葉が思い浮かぶ。その一つに「非理(ひり)法権天(ほうけんてん)」がある。「非は理に勝たず、理は法に勝たず、法は権に勝たず、権は天に勝たず」として、天道(至上万能の神)に従って行動すべきだと説く言葉である。

 忠臣・正成を象徴する言葉として語り継がれているが、正成の活躍を描いた『太平記』や『梅松(ばいしょう)論』には、正成が「非理法権天」の旗印を押し立てて戦場を駆け巡ったという記述はない。

 楠公(なんこう)精神に大きな影響を受けたとされる吉田松陰(しょういん)ら幕末の尊攘志士らの間でも語られた形跡はない。この言葉が公然と世間の目に触れたのは、先の大戦で、特攻隊や戦艦「大和」が出撃の際に旗印として掲げたときだ。

 この5文字は本当に正成の旗印だったのか。

 非理法権天という言葉は、寛永11(1634)年に発行された『尤(もっともの)草紙(そうし)』下巻に登場する。「ひはもとより理におさる。理は法度におさるる。法度も時のけんにおさる。けんは天道におさるる」。「ひ」は「非」で、「けん」は「権」だ。

 江戸時代中期の故実家、伊勢貞丈(さだたけ)が宝暦13(1763)年に遺(のこ)した『貞丈家訓』では、「非と云(いふ)は無理の事也、理と云は道理の事也、法と云は法式也、權(権)と云は權威也、天と云は天道也。非は理に勝つ事ならず、理は法に勝つ事ならず、法は權に勝つ事ならず、權は天に勝つ事ならぬ也」と解説されている。

 5文字が正成と関連付いて登場したのは、元禄期(1700年前後)に井原西鶴(さいかく)が記した『本朝町人鑑(かがみ)』だ。

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