PR

ライフ ライフ

直木賞 大島作品「虚実めぐる闘いリアルに描く」 桐野夏生選考委員が講評

第161回直木賞の選考過程を説明する選考委員の桐野夏生さん=17日、東京都中央区
第161回直木賞の選考過程を説明する選考委員の桐野夏生さん=17日、東京都中央区

 直木賞は候補6作のうち、大島真寿美さん(56)の「渦 妹背山婦女庭訓 魂結び」が受賞を決めた。選考後、会見した選考委員の桐野夏生さん(67)は「やわらかな大阪弁の語り口が素晴らしく、その語り口の中で読者もいつの間にか渦に引き込まれる感覚がある。大島さんの実力のほどがうかがえる作品だった」と太鼓判を押した。

 例年より長い約2時間40分の選考を経て決まった直木賞。最初の選考で、候補2回目の大島さんの「渦-」と、初候補の朝倉かすみさんの「平場の月」、同2回目の窪美澄さんの「トリニティ」の3作が拮抗、この3作による決選投票の結果、過半数の支持を得て、大島さんに決まった。

 「渦-」は、江戸時代の道頓堀で人形浄瑠璃にすべてをささげた男の一代記。受賞理由について、桐野さんは「主人公の浄瑠璃作者の虚実をめぐる闘いがリアルに描かれていた」とし、「フィクションという虚を書いているとリアルな自分の人生がやせていく、実の人生が充実していると虚が虚ろになるという反転現象がうまく書かれていた」と称賛した。

 最後まで争った朝倉さんの「平場の月」は、50代男女の悲恋の純愛物語。「比喩の斬新さや登場人物の話の運びのうまさは高い評価を得た」とする一方で、「主人公が50代だが30代にしか思えない会話だ」「女性主人公の死というドラマチックな出だしだが、盛り上がりがない」など否定的な意見があり、及ばなかった。

 窪さんの「トリニティ」は、3人の女性の交差する人生が主となって物語が進む作品。「社会情勢がストーリーにからんでいると評価する声がある一方、ストーリーのために社会情勢を使っているという厳しい指摘も。実在する出版社をモデルとしており、当時を知っている選考委員も多く、厳しい意見が多かった」。

 澤田瞳子さんの「落花」は、平安中期の僧を主人公に平将門の乱を巡る長編で、「たいへんよく調べられているという評価はあったが、キャラクターがストーリーに都合がよすぎるという指摘があった」。

 原田マハさんの「美しき愚かものたちのタブロー」は、国立西洋美術館の「松方コレクション」の数奇な運命と奇跡を描いたが、「作者が何を書きたいのか分からない」。

 柚木麻子さんの「マジカルグランマ」は「明るくて軽いタッチで読みやすくて評価もあったが、残念ながら食い込んでくる物がないという意見があった。他の作品に比べて明るいところが損をしたのかなと思う」とした。

 今回は、候補者全員が女性という点でも注目を集めた。桐野さんは「今回は偶然、女性作家の実力が高かった。多様な作品で、選ぶのに困るぐらい実力も伯仲していた。これが珍しいと思われないようになるといいなと思う」と話した。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ