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日常に潜む不穏さ、透明な文章で 芥川賞の今村夏子さん

今村夏子さん
今村夏子さん

 第161回芥川賞(日本文学振興会主催)が17日、今村夏子さん(39)の「むらさきのスカートの女」(小説トリッパー春号)に決まった。

 何げない日常に潜む不穏さを、透明感のある文章でさらりと描く。そんな作風で、三島由紀夫賞と野間文芸新人賞にも輝いた期待の才能。「私には手の届かない賞」と話していた芥川賞も射止め、権威ある純文学新人賞「3冠」を成し遂げた。

 受賞作「むらさきのスカートの女」は、近所で「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性に強く惹かれる「わたし」の物語。友達になりたい余り、彼女を同じ職場で働けるように仕向け、通勤のバス内や家の近くの商店街、公園でもつかず離れずの距離で見守り続ける。そんな「わたし」の姿は怪しくて滑稽だけれど、どこか切なくもある。

 「(主人公の)『わたし』はすごく孤独な人。どんなに頑張ってもずっと孤独…ということが自分の中でも腑に落ちるんです」

 幼いころは絵を描くのが好きで、高校時代に日記を書く面白さにはまった生粋の文化系。一方で「接客は苦手で」と、大学卒業後は体力勝負のアルバイトも転々とした。受賞作で描くホテルの清掃は20代半ばから5年ほど働いた最も愛着のある仕事だ。「天職だと思うくらいにお掃除は楽しかった。自分の中のものを絞り出す感覚。すごく、自分らしいものが書けた思う」

 大阪市内で会社員の夫と2歳の長女と暮らす。結婚して数年間、小説を書いていることを夫に打ち明けなかったくらい職業作家の意識は薄かった。今は子育てと家事をこなしながら1日5時間は机に向かう。「集中してわれを忘れている感じがごくたまにある。その時間がすごく楽しい」。ふんわりとした口調から出る言葉に、時折紛れもない作家の顔がのぞく。(海老沢類)

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