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【編集者のおすすめ】『車軸』小佐野彈著

 ■暴力的なまでに切ない物語

 国際興業グループ創業者の小佐野賢治さんを大伯父に持ち、自身も学生時代から起業。現在は台北を拠点に、海外での日本茶カフェチェーンの経営を手掛ける一方、オープンリーゲイ(ゲイを公表)としての自身の胸中を詠み、数々の賞を受賞した気鋭の歌人でもある。そんな才にあふれた小佐野彈(だん)さんが、初めての小説作品を上梓(じょうし)しました。

 物語の主人公は、地方の裕福な家に生まれながら、その家系を「偽物」と嫌悪する真奈美。大学3年の夏、台湾からの留学生である友人アイリーンの紹介で、潤と出会います。戦後成り金の資産家の家に育ったゲイの潤もまた、自身の出自が「本物」ではないことにコンプレックスを持っていました。

 彼らに案内され、初めて新宿歌舞伎町のホストクラブを訪れた真奈美は、潤ともマクラ(枕営業)するナンバー2ホストの聖也に興味を持ち、指名します。

 恵まれた境遇であるがゆえの拭いようのないコンプレックスと、堕落への憧れという共通項を持つ2人は、やがて、互いを渇望するように。ある時、潤から聖也を交えて3人でベッドを共にしようと提案された真奈美は、迷わず受け入れ、約束の夜を迎えますが-。

 求めあう心とつながることのない身体を抱えた男女が奏でる、暴力的なまでに切ない、ある愛の物語。歌人ならではの研ぎ澄まされた言語表現とともに、潤と真奈美がたどり着く壮絶なラストをぜひ見届けてください。(集英社・1300円+税)

 集英社文芸書編集部 伊礼春奈

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