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【親子でわくわく かがく絵本】「トマトのひみつ」 共感しながら知っていく

『トマトのひみつ』
『トマトのひみつ』

 平成6年に福音館書店から刊行された『トマトのひみつ』(山口進文・写真)は、トマトの「ぼく」が、自分を取り巻くクモや虫との関わりを通して、トマトの不思議な力と秘密を解き明かす写真絵本です。

 野菜には色々な虫がやってくる。そして、その虫を食べるためにクモは周りに巣を作る。でも、「ぼく」は体の毛から虫が嫌いな匂いを出す。虫たちは「この におい だいっきらい」と逃げて行く。匂いを嗅ぐことが苦手なクモは、その姿を見て、初めてトマトの不思議な力を知り、南瓜(かぼちゃ)畑に引っ越した。

 トマトの生態を、「ぼく」の一人称で語ることでストーリーが生まれます。傍観的な眼差(まなざ)しで外側からトマトを観察するのではなく、作者がトマトの内側に入り、トマトに「なって」、トマトの声を語っています。だから、聴き手である読者はトマトに親しみを感じ、共感しながらトマトのことを知ることができます。これは、子供の語り方、知り方そのものです。

 月曜日の朝、土日に水をあげなかったトマトを見た3歳児のケイ君は、「トマトが、喉がかわいたよ~って言ってるよ」と私に伝えに来ました。一緒に水をあげ、しばらくして元気になったトマトを見て「あ~助かった~ってトマトが言ってるね」とトマトの声を代弁しました。このような関わりや知り方は、幼稚なものなのでしょうか?

 ノーベル医学・生理学賞を受賞した細胞遺伝学者、バーバラ・マクリントックは、研究対象のトウモロコシを育て、親しく知ったといいます。そして仕事が核心をついているときには、染色体のなかに入り込み、自分は染色体の一部になって周りの全てが大きく見えたと述べたそうです。(『動く遺伝子』晶文社)

 人間の科学する心や「知る」ことの原点は、子供の知り方にあるのです。そして、良い絵本は、子供の「知りたい」に寄り添い、共感的に「知る」ことを育てていくのです。(国立音楽大教授・同付属幼稚園長 林浩子)

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