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「平和」「防災」「幸福」 慶大生が殺到する佐藤可士和さんのデザイン講座

「未踏領域には見本がない。でもそこにデザインの可能性を感じる」と話す佐藤可士和さん(佐藤徳昭撮影)
「未踏領域には見本がない。でもそこにデザインの可能性を感じる」と話す佐藤可士和さん(佐藤徳昭撮影)

 「平和」「健康」「防災」「幸福」をデザインすると-。一見デザインとは無縁の抽象的かつ哲学的テーマに対し、とことん思考と議論を重ね、一定の解決策を提示する。クリエイティブディレクター、佐藤可士和さん(54)は、こんなユニークな授業を7年前から、慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で行っている。授業の核となる思考法と実践内容をまとめたのが、新刊『世界が変わる「視点」の見つけ方 未踏領域のデザイン戦略』(集英社新書)だ。

 授業は7週間の集中講義で行う。100人以上の受講希望者から選抜された学生24人が、ワークショップ形式で「未踏領域のデザイン」に取り組む。

 佐藤さんら教員サイドが設定するテーマが面白い。東日本大震災(平成23年)の翌年と翌々年は「防災のデザイン」だった。かと思えば「本当の平和のデザイン」(29年)、「無二の私の幸福のデザイン」(30年)など、すぐにイメージできないものも。

 「抽象的なこと、何となく答えのないようなことを学生時代に考えることは大事だと思う」。なぜなら佐藤さんが言うデザインとは、単に意匠的な技術ではなく「考え方であり、ビジョンの設計だから」。ではビジョンをどう設計するのか。大切なのは「課題」「コンセプト」「ソリューション(解決策)」とし、授業も概ねこの3ステップで進む。

 「まず与えられたテーマに対し、課題を発見する。次にコンセプト(視点や方向性)を定める。最終的に具体的な解決プランの提示まで持っていくけれど、重要なのはコンセプト。つまり世界が変わる視点をどう見つけられるか、です」

 佐藤さん自身、ユニクロ、楽天といった大手企業から、今治タオルなどの地場産業、幼稚園、病院まで、次々と未踏領域に足を踏み入れブランド戦略を手掛けてきた。実社会の仕事にはいろんな制約があるものの、思考のプロセス自体はほぼ変わらないという。「でもSFCでは誰も依頼してこないだろうテーマを扱う。僕もワクワクする」

 学生たちの案にはそれぞれ、新しい気づきが詰まっている。例えばあるグループは、テーマ「平和」に対し、生まれたときから多様性を当たり前に受け入れる子供=「多様性ネイティブ」を増やすという“価値観のデザイン”を提案。また「オリンピック・パラリンピックのデザイン」(28年)というお題に対し、「オリ・パラ間の空白の2週間をどうつなぐか」という斬新な視点に立ったグループもあった。

 こうした授業を書籍化した本書は、学生だけでなくビジネスパーソンらにも読まれているという。「考える力や方法論を身に付けることによって、新たな視点を見つけるための一助になれば」と佐藤さん。

 ちなみに今年のSFCの授業は「地球リセットのデザイン」がテーマ。人類が皆、他の惑星に移住するとしたら-。令和の学生からはどんなアイデアが出てくるだろうか。  (文化部 黒沢綾子)

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