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【ビブリオエッセー】走るノーベル賞学者の笑顔 「友情 平尾誠二と山中伸弥 最後の一年」 山中伸弥 平尾誠二・惠子(講談社)

 「山中伸弥先生ーッ、僕は先生を尊敬してまーす!」

 年がいもなく私は目の前のノーベル賞学者に大声で叫んでしまった。

 毎年2月に行われる京都マラソン。競技場で知人のスタートを見た後、場所を丸太町通に移した。ここは鴨川方面から走ってきたランナーが同じ道をUターンする、絶好の応援ポイントだ。

 突然だった。知人を待っていると白いキャップと体操着…まるで体育学校の生徒のような格好の山中さんが走ってきたのだ。胸のゼッケンに本名が記され、私は思わず名前を連呼した。

 そのとき脳裏に浮かんだのはWBCのキャンプでイチロー選手に「世界で一番尊敬してまーす」の声援を送った少年。これにならった、咄嗟に出た言葉だった。

 山中さんはUターンして離れてしまったが私の声は響き渡った。すると山中さんはうつむいて走りながら、小さな笑みを浮かべてくれたのだ。一瞬だけど私はノーベル賞学者を笑わせたのである。

 その後、山中さんと、実は私が一番好きな平尾さんとの絆を綴ったこの本と続編「友情2 平尾誠二を忘れない」を読んだ。心が震えた。

 山中さんは走っているとき平尾さんの声が確かに聞こえた、という。「先生、行けるで、行けるで」。

 平尾さんに「背中をずっと押されている」感覚があって「自己ベストを十分以上更新できました」と書いている。尊敬と感謝の本だ。そしてこのマラソンは、私にとっても忘れられないものとなった。

 神戸市東灘区 佐野武61

 【ビブリオ・エッセー募集要項】本に関するエッセーを募集しています。応募作品のなかから、産経新聞スタッフが選定し、月~土曜日の夕刊1面に掲載しています。どうか「あなたの一冊」を教えてください。

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