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【中西進さんと行く 万葉集最果ての歌】長崎・対馬 哀切にじむ国境の海

中西進さん
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 実は後世、ロシアの船が対馬近海に出没したため、明治政府は城山を要塞化し、砲台を築いている。

 船が城山に近づくと、波打ち際に鳥居が見えてきた。城山を守護する「大吉戸(おおきど)神社」だという。金田城を命がけで守った防人の魂を慰める社でもあるのだろう。中西さんは神社に向かって静かに手を合わせた。

 《防人に行くは誰(た)が背(せ)と問ふ人を見るが羨(とも)しさ物思(ものもひ)もせず》 巻20-4425

 (防人に行くのは誰の夫かとことばをかけている人を見るのがうらやましい。何の物思いもなく)

 防人はその多くが東国から徴発された農民兵だ。朝廷の命により防人となり、家族と離れ離れになる悲しみを詠んだ歌は哀切極まるものがある。

 「防人の魂を慰める神社。地元の人が自然に口ずさむ万葉の歌。風土の中に万葉集がもっとも生きているのは、ここ、対馬かもしれませんね」

 中西さんがしみじみと語った。

 ◆次回は9月に万葉集北限の地・宮城を紹介します。

【プロフィル】中西進(なかにし・すすむ) 昭和4年、東京都出身。高志(こし)の国文学館長(富山市)、国際日本文化研究センター名誉教授。比較文学の手法で分析した万葉集研究は、「中西万葉学」とも評されている。平成25年、文化勲章。

 <対馬

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 九州と朝鮮半島の間の対馬海峡に浮かぶ島で、長崎県に属する。人口約3万1千人、面積は約700平方キロメートル。対馬海流の影響で、1年を通じて温暖な気候。島の約89%が山地で、国の天然記念物、ツシマヤマネコが生息することでも知られる。

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