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【この本と出会った】藤原書店社長・藤原良雄 『吉田松陰』徳富蘇峰著 感銘受けた世界史的視野

藤原書店社長・藤原良雄氏
藤原書店社長・藤原良雄氏
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 吉田松陰(1830~59年)の本を読むようになったのは大学卒業前の頃です。内定していた企業が1社ありましたが、入社する気になれず、塾でも始めようかと思っていました。幕末の私塾を調べる中で、松陰が教えた松下村塾のことが気になり、図書館で松陰の「幽囚(ゆうしゅう)録」などを読んでいました。

 昭和56年ごろ、明治から昭和にかけて活躍した第一級のジャーナリスト、徳富蘇峰の『吉田松陰』が岩波書店から復刊され、手に取りました。松陰はペリーが再来した1854年、下田で海外への密航を企て失敗。幽閉中、松下村塾で教え、最後は幕府の対外政策を批判し刑死しました。蘇峰は松陰の生涯を時代の中に位置づけ、短い表現で本質をとらえています。

 冒頭の「誰ぞ 吉田松陰とは」では、「彼は多くの企謀を有し、一の成功あらざりき。彼の歴史は蹉跌(さてつ)の歴史なり。彼の一代は失敗の一代なり」と記し、維新との関連では「彼はあたかも難産したる母の如し。自(みず)から死せりといえども、その赤児は成育せり、長大となれり」と評価しています。

 旅と囚獄生活が長かった松陰について、蘇峰は「日葵(ひまわり)が恒(つね)に太陽に向う如く、磁針が恒に北を指す如く、川流の恒に海に入る如く、彼の心は恒に家庭に向かって奔(はし)れり」と家族愛の深さを説き、妹に対し「婦人は夫を敬う事父母同様にするが道なり」と記した手紙を紹介。松陰が自らの死刑の決定を知った際に作った「親を思う心にまさる親心 きょうの音ずれ何と聞くらん」との歌を記し、両親への思いを挿入しています。

 同時代のイタリアの革命家マッツィーニと比べるなど、世界史的視野で同時代を見ているのもユニークで、興味がかき立てられます。

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