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【話の肖像画】チベット難民の医師・西蔵ツワン(67)(4)

 ところで私は、この旅が亡命だと知らされていませんでした。温泉だ、変装しているけど父もいる、楽しいな-という少し浮かれた気分です。学校で習った中国の民謡や国歌を口ずさみ、ギプスをさすりながら行きました。途中、父が手配していた民家に泊めてもらい、10日から2週間くらいかけて国境付近に着きました。

 国境を越える前日から洞窟に身を潜め、次の日の夜が来るのを待って、月明かりの中、ヒマラヤ山脈の峠を越え、ネパールに入りました。このときも私は歌いながら歩いていたのですが、国境を越えてしばらく行ったところで、父が「もう中国の歌じゃなくていいよ」と言いました。「温泉じゃなくて、本当はインドに行くんだ。おいしいバナナが食べられる国だよ」。そう言って父は目出し帽を外し、チベットの歌を口ずさみました。(聞き手 平田雄介)

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