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【商業捕鯨の灯 ふたたび】(上)IWC脱退の内幕 敗訴後ひそかに練られた4つのシナリオ

商業捕鯨の再開を目指した日本の提案が否決された国際捕鯨委員会(IWC)総会=2018年9月、ブラジル・フロリアノポリス(共同)
商業捕鯨の再開を目指した日本の提案が否決された国際捕鯨委員会(IWC)総会=2018年9月、ブラジル・フロリアノポリス(共同)
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 31年ぶりに商業捕鯨を再開するのろしが上げられた。2018(平成30)年12月26日、首相官邸。定例記者会見に臨んだ菅義偉(すが・よしひで)官房長官がこう発表した。

 「昭和63年以降中断している商業捕鯨を来年7月から再開することとし、国際捕鯨取締条約から脱退することを決定しました」

 日本がクジラの資源管理を話し合う国際機関、国際捕鯨委員会(IWC)を脱退し、商業捕鯨を再開するとのニュースは、瞬く間に世界中に伝えられた。

 国際機関からの脱退は、日本の国際協調路線に反する突然の政策転換のように見られたが、ひそかにシナリオは練られていた。

 2014年4月11日、東京・永田町。報道陣が締め出された会議室で重要会議が開かれた。自民党捕鯨議員連盟の幹部数人が集まった「インナー会議」。1週間余り前、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)で、日本が実施している南極海調査捕鯨の中止を命じる判決が出たばかりだった。

 外務審議官当時、裁判で日本政府代理人を務めた鶴岡公二氏がインナー会議に事情説明に訪れ、「責任は自分にある」と陳謝した。

 10年にオーストラリアが提起した訴訟で、日本の調査捕鯨は「(IWCの)科学的目的の調査の範疇に収まらない」と判断された。政府団の一人が「まさか敗訴するなんて」と漏らす予想外の判決だった。

 外務省、水産庁が今後の捕鯨政策に与える影響を分析した結果、新たな調査計画を組み直しても、判決内容を踏まえていないと見なされれば、「国際裁判に提訴され、敗訴する可能性がある」と結論づけられた。

 解決の糸口が見えない反捕鯨国との対立。IWCにとどまっていては、目標とする商業捕鯨はますます遠のく。インナー会議で鶴岡氏は「新たに提訴されれば、われわれでは抑えきれない」と危機感を訴えた。

 ある議員がついに会議室中に響き渡る声でこう切り出した。

 「IWC脱退を真剣に考えるべきだ」

 日本の悲願といえる商業捕鯨の再開が、議論の俎上(そじょう)に載せられた瞬間だった。

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