PR

ライフ ライフ

【話の肖像画】作家・江上剛(65)(10)人生2度目の強制捜査

前のニュース

日本振興銀行が経営破綻し、記者会見で頭を下げた(左から2人目) =平成22年9月、東京都千代田区有楽町
日本振興銀行が経営破綻し、記者会見で頭を下げた(左から2人目) =平成22年9月、東京都千代田区有楽町

 〈平成16年4月、中小企業向け融資に特化して日本振興銀行が開業した。その後、同行の社外取締役を引き受けることになる〉

 新聞記者の友人を通じて、木村剛氏が作った日本振興銀行を助けてほしいと頼まれたんです。木村氏は、竹中平蔵元金融・経済財政相のブレーンとして不良債権処理を進めるなど、金融界ではスーパーエリートと呼ばれていた。金融庁の検査マニュアルを中心になって作成したとされ、僕も銀行員のときに彼の講義を聴いたことがありました。ただ、このころ、評判はあまりよくなかった。

 銀行員時代に中小企業への支援が十分にできなかったこともあり、協力することにしました。自民党の平将明衆院議員らとともに社外取締役を引き受け、成り行きで株までもたされた。社外取締役といっても、会議に出たら1回数万円の報酬をもらうだけ。ボランティアみたいなものです。

 僕は木村氏に「中小企業とは対面融資が原則。とにかく会って商売しないとだめだよ」と何度も言ったし、木村氏も僕たち社外取締役のアドバイスを聞いてくれていたように思っていました。多くの友人から「早く身を引いた方がいい」と言われましたが、社外取締役が辞めると取引先や預金者、従業員に迷惑をかけてしまう。誰一人辞めませんでした。

 〈日本振興銀行は景気の悪化で不良債権が増加し、22年3月期決算で51億円の赤字に転落。7月に前会長の木村氏が銀行法違反容疑で逮捕されたのを受け、急遽(きゅうきょ)社長として登板する〉

 なぜか分からないが、木村氏は金融庁の検査に協力的ではなかった。そのため検査忌避や検査妨害など銀行法違反の罪で金融庁に告発され、警察が強制捜査に入り刑事事件化した。銀行員時代には東京地検、今度は警視庁と、人生で2度も強制捜査を受けることになってしまった。

 社長になって業務内容を調べたら、社外取締役として知らされていたことと内容があまりにも違っていてあぜんとしました。それでも中小企業支援のため、この銀行を潰してはいけないと思いがんばっていた。

 そんな中、社外取締役の弁護士さんが自殺した。僕が一番頼りにしていた人でした。自殺の前日、深夜に関係者も交えてレストランで食事をして、「明日もがんばろう」と言って別れたのに、翌日の朝、自宅で首をつったんです。親しい人の自殺は、(旧第一勧業銀行の)宮崎邦次(くにじ)元相談役に続いて2人目。ショックでした。

 〈日本振興銀行はこの年の9月に破綻。預金保険制度に基づき限られた範囲内で預金の払い戻しに応じるペイオフが発動される〉

 日本初のペイオフ銀行となったことにはじくじたる思いがある。記者会見を開いたら、顔見知りの記者が駆けつけてくれた。ペイオフ発動への非難というより、僕を応援するような質問が多く、同席していただいた奥野善彦弁護士が、「江上さんの応援が多いですね」と驚いていた。銀行員時代もそうですが、誠実に対処してきてよかったと思いました。(聞き手 平沢裕子)

次のニュース

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ