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「考える力を育てたい」 JICA エッセイコンテストを授業に取り入れる理由

 中学生、高校生に開発途上国の現状や日本との関係について理解を深め、国際社会の中でどう行動すべきかを考えてもらう「JICA 国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト」(独立行政法人国際協力機構《JICA》主催、産経新聞社など後援)の募集が6月7日から始まった。体験や考えをもとにエッセイを書き、コンテストに応募することが、生徒自らが考えるきっかけになると期待し、授業や夏休みの宿題として取り入れる学校が増えている。

photo: JICA/Kato Yuki
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国際協力を考えることは高いハードルではない

 「今の生徒たちは、テレビやインターネットからどんどん情報が入ってくる環境にいるので、知識量は豊富。しかし、もっと大事なことは、その単語の意味を現実として感じられるか、その言葉の裏側に何があるのかを知ることだ」。

 埼玉県本庄市にある県立本庄高校で、受け持ちの公民科の授業に、JICA エッセイコンテストを取り入れている平岡星児教諭(33)は、こう語る。本庄高校では、3時間の授業枠をエッセイコンテストのために設けている。まず2時間の授業を使い、図書館で調べ物をしたり、インターネットを活用してリサーチするほか、SDGs(持続可能な開発目標)や途上国の貧困問題など生徒が関心を持ったテーマについて、グループに分かれて議論して掘り下げて考え、残りの1時間の授業でエッセイを書く。テーマ内容は多岐にわたり、新聞やニュースを見て感じたこと、自身の地域や学校でのボランティア体験、途上国での実際の体験といったものまである。

 同校の校歌の結びには「われらは世界と共にあり」という一節がある。自らも同校の卒業生である平岡教諭は、野球部の顧問として、部員たちと一緒に校歌を歌うことを目指している。大学卒業後、2年間学習塾で教えた後、念願の教職に就いた。「生徒の人間的な成長に携われることが教職の魅力」という熱血漢は、5年前、国際交流に関心のある教諭らで構成する学内の国際交流委員会の先輩教諭から、「生徒たちが国際協力の問題を自主的に考える良い教材になる」とJICA エッセイコンテストを紹介され、授業に取り入れた。

埼玉県立本庄高等学校 平岡星児教諭
埼玉県立本庄高等学校 平岡星児教諭
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 平岡教諭自身は、海外旅行程度しか外国とのかかわりはなかった。しかし、身近に外国人観光客が増え、インターネットなどを通じて、海外のポップカルチャーを自然に吸収する生徒たちを見て、国際協力について考えてもらうことが、生徒たちにとってそれほど高いハードルになるとは思えなかった。

 授業では3人程度のグループに分かれ、テーマ選定や情報収集に取り組み、図書館やスマートフォンで資料を集めるよう指示した。「最初は、まじめに書いてもらえるかどうか不安だった」というが、グループワークの中で、生徒たちからたくさんの疑問や質問をぶつけられ、その心配は吹き飛んだ。

言葉の表面だけでなく、意味する現実を感じてほしい

 生徒たちから投げかけられる疑問に対する答えを示すのは簡単だが、そうすると、自分で考える機会を奪うことになる。「喉元まで出てくるのをぐっとこらえて、自分たちで考えさせるようにしている」。

 「グローバル化の進展で、今の生徒たちは、海の向こうで起こっている出来事も、隣町で起こっている出来事にも、それほど大きな違いを感じていない」と平岡教諭。JICAエッセイコンテストを授業に取り入るのは2019年度で5回目となるが、「今年は、エッセイを書く過程で考えたことを実際に実現するには、どのような団体や機関と協力が必要で、コストや時間はどれくらいかかるのかについても自分たちで考える、といった取り組みを実践していきたい。どれくらいのお金がかかり、どのような機関に協力を呼びかければいいのかも考えてもらうような取り組みを考えている」という。

 具体的な計画はこれからだが、例えば、途上国の教育環境を整備するために、学校を建設するとしたら、校舎の建設や教員の採用などにどのくらいの予算が必要かを考えさせたり、予算が確保できたとして、期間はどのくらいかかるのか、実際にプロジェクトを始めるには、どういう人たちに協力をお願いすればよいのか、学校が立ち上がった後にどう継続的に運営していくのかを考えてもらう、といった具合だ。

 「つまり、『知る、考える、行動する』のプロセスを意識することが大事で、『考えて終わり』にしてしまわぬよう、グループ内だけでなくクラスや学年でそれぞれ人の作品を読んで他人の考えに触れる機会を設けたい」という。

生徒と教師が対等な視点で、ともに学ぶことが大事

 「JICA エッセイコンテスト」が始まったのは1962年で、2019年度で高校生の部は58回目を数える(中学生の部は1996年に始まり、24回目)。2018年度は中学生の部3万7748点、高校生の部に3万4738点の作品が国内外から寄せられる。中学・高校とも約100人に1人が応募している計算になる。

 「JICA エッセイコンテスト」は学校単位での応募が全体の約9割を占める。教育関係者がこのコンテストの活用に積極的な背景には、中学生・高校生が国際的なかかわりを持つ機会が増えていることがある。広く世界を知ることの重要性は年々高まっており、このエッセイを書くことが、生徒たちが深く考え行動を起こすきっかけになるからだ。

昨年度の表彰式の模様
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 中学生の部で審査委員長を務める教育評論家の尾木直樹氏は「受け身で誰かから答えを与えられるのを待っているだけでは、これからの社会を生き延びる力は身に付かない。感受性豊かな10代のうちに、国際社会の様々な現実を『自分にも関係のある出来事』として受け止める体験をしておくことは、視野を広げ、探求心を育むために非常に有意義なことで、ひいてはそれが新しい価値を創造していくことにつながる」と話している。

「JICA 国際協力中学生・高校生エッセイコンテスト」の募集概要はこちら

※募集締め切りは9月11日。学校応募だけでなく、個人でも応募できる。

提供:独立行政法人国際協力機構(JICA)

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