PR

ライフ ライフ

【ソロモンの頭巾】海洋プラごみ 99%が行方不明という謎の旅 長辻象平

その他の写真を見る(1/3枚)

 海洋プラスチックごみが国際的な問題になっている。便利な包装容器などとして大量に使われた後、ごみと化して海へ流れ込み、5ミリ以下の破片となったマイクロプラスチックが海の生態系に与える影響も懸念される状況だ。

 海洋プラごみは、オゾンホール、温暖化に続く第3の地球環境問題として近年、急浮上。軽井沢での20カ国・地域(G20)エネルギー・地球環境分野の閣僚会議でプラごみ削減の国際枠組み構築が合意されたが、未解明部分も多い。実態解明が急がれる。

 ◆流出推定量に幅

 令和元年版の環境白書も海洋プラごみ問題に焦点を当てた。

 現代人がプラ類を使い始めた1950年以降、世界で生産された総量は83億トン。うち63億トンが廃棄されたとの推定や、毎年の海洋へのプラごみ流出量を800万トンとする試算があることなどを紹介している。

 だが、世界の海への正確な流出量は不明なのだ。

 米ジョージア大学のジェンナ・ジャンベックさんらの研究グループが4年前のサイエンス誌に発表した論文によると、2010年の1年間に約190の沿岸国から480万~1270万トンのプラごみが世界の海に流れ込んだとされている。

その他の写真を見る(2/3枚)

 その内訳は1位が中国で132万~353万トン。2位のインドネシアは48万~129万トン。3位はフィリピンで、28万~75万トンと続くなど上位には東南アジアの国々が多い。日本は2万~6万トン、米国は4万~11万トンで、世界30位と20位だった。

 プラごみの実態把握は難しく、この研究のように最小と最大見積もりに約3倍もの不確かさがあるのが現状だ。

 ◆海洋機構が調査

 もっと大きな差異もある。これまでに流出したプラごみのうち、海に浮くものは7500万トンと考えられている。

 その中の4割が沿岸に漂着したとすると残り4500万トンが外洋を旅して漂っているはずだが、実際の観測などから算出されるその量はわずか44万トン。

 あるべき量の「1%」しか確認できないのだ。残りの99%は一体どこに消えたのか。

 「ミッシングプラスチック」の謎解きが、海洋研究開発機構(JAMSTEC)で始まっている。「私たちは海の2カ所を謎解きのための鍵の在りかとみています」と、海洋プラスチック動態研究グループリーダーで主任研究員の千葉早苗さんが教えてくれた。

 その1カ所は「観測調査の空白域」。海洋プラごみなどは、海流が巨大な循環流を形成する場所に集まりやすい。世界では5カ所が知られ、北太平洋の米国沖などでは重点的に調査が繰り返されてきた。

 「日本に近い北太平洋西部も海流の動きからプラごみが集積しやすい所なのですが、空白域になっていたのです」

 ◆新研究で貢献を

 海プラは、東南アジア諸国からの発生が多いので、ここを精査すると謎解明に至る可能性が高そうだ。

しんかい6500で観察された駿河湾の海底に散乱するポリ袋などのプラスチックごみ(海洋研究開発機構提供)
しんかい6500で観察された駿河湾の海底に散乱するポリ袋などのプラスチックごみ(海洋研究開発機構提供)
その他の写真を見る(3/3枚)

 マイクロプラスチックの調査では、採取した膨大な数の標本の分類や計測に時間と人手がかかり、研究のネックとなっていた。その問題を一気に解決する新鋭装置の開発がJAMSTECで進められている。

 多様な素材を識別できるハイパースペクトルカメラで、移動ベルト上に並ぶ大量のマイクロプラスチック片を迅速に測る人工知能(AI)搭載の装置。

 船を走らせながら作動させるとリアルタイムでデジタルデータが取得できる。

 「もう1つの鍵の在りかは深海底です」と千葉さん。深海調査はJAMSTECのお家芸だ。「しんかい6500」などで記録した約3200点の映像や画像をまとめた「深海デブリ(ごみ)データベース」がすでに構築されている。

 独自の進化を遂げてきた深海生態系に及ぼす影響も、海洋プラごみに関連する新たな研究テーマとして注目される。

 1年前、カナダでの先進7カ国(G7)首脳会議で「海洋プラスチック憲章」への署名を見送るなど、この分野での国際対応に出遅れ感があった日本としては、研究貢献で海洋国家としての存在感を示したいものだ。

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ