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【話の肖像画】作家・江上剛(65)(3)命懸けで「いい銀行に」

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総会屋への利益供与事件でトップが交代。第一勧銀の会見には大勢の報道陣が詰めかけた =平成9年5月、東京都千代田区内幸町
総会屋への利益供与事件でトップが交代。第一勧銀の会見には大勢の報道陣が詰めかけた =平成9年5月、東京都千代田区内幸町

 〈株主総会の後、自ら銀行を浄化する組織をつくり、責任者として不良債権の回収や、暴力団、総会屋など反社会的勢力との縁切りに取り組んだ〉

 仲間10人で問題に対処しました。集めた10人は、とにかく曲がったことが嫌いの「逆命利君(ぎゃくめいりくん)」(命令に逆らっても正しいと思うことを進言する)タイプの人を僕が抜擢(ばってき)しました。人事部にいたので、そういうのはよく分かっていたんです。その中の一人が「死んでもいいから、いい銀行にしましょう」と言ってくれて。

 僕は、一人でも危害を加えられる事態になれば、責任を取って銀行を辞める覚悟で仕事をしていました。なぜこんなに本気になったかというと、自殺した宮崎邦次(くにじ)元相談役や逮捕されたある役員と「すべての総会屋や暴力団との取引を公表し、根絶する」と約束したからです。

 とにかく総会屋にお金は渡さない。当時いろんな雑誌がありましたが、線引きが難しいので全部やめた。彼らへの焦げ付いた融資も絶対に回収することにしました。住宅ローンを延滞していた暴力団の親分のところへ回収にも行きました。親分は「返したはずだ」と言うが、こちらが「そんなことはない」と食い下がると、「分かった。調べる」と言ってくれた。結局、利息も含めて返済してくれましたが、1人亡くなりました。実際のところは分かりませんが、運転手が使い込みしていたらしいんです。「俺たちが返済を迫ったせいで殺されちゃったのかな」と、みんなでぞっとしましたね。

 ただ、本当に大変だったのは、外の連中よりも銀行内の役員らとのやりとりです。国税の査察官から「暴力団や総会屋の連中は、『これは銀行からもらった金だ。融資ではない』と言っているが、融資と言うならきちんと回収に責任を持つとの役員の連判状を取れ」と言われました。役員を回っても、みんなはんこを押したがらない。自分に責任が及ぶのがいやなんでしょう。事件を通じて、人間の本性を見せてもらいました。

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