PR

ライフ ライフ

【話の肖像画】作家・江上剛(65)(2)仲間が次々逮捕、涙の日々

前のニュース

総会屋への利益供与事件で第一勧銀本店の捜索に入る東京地検の係官ら =平成9年5月、東京都千代田区内幸町
総会屋への利益供与事件で第一勧銀本店の捜索に入る東京地検の係官ら =平成9年5月、東京都千代田区内幸町

 〈総会屋への利益供与が発覚する3年前の平成6年6月、第一勧業(現みずほ)銀行本店人事部から広報部次長に異動した〉

 バブルが崩壊した人事部時代(2~6年)は行員の不祥事がいっぱい起きた。横領があったり、エリート行員が株で失敗して自殺したり。不祥事が起きると最初に人事部に通報がくるんです。自分で言うのもなんですが、僕は隠蔽(いんぺい)するのがうまかった。役員の女性問題や融資をめぐるスキャンダルもうまく処理しました。大きな不祥事は大蔵省(当時)に報告しますが、公開する義務はないので、世間に知られないことが銀行の信用を守ることだと思っていました。当時はディスクロージャー(情報開示)という考えはなかった。銀行員ならみんな同じように考えていたと思います。

 広報部でもいろんな不祥事をもみ消すのが大きな仕事でした。(総会屋事件のきっかけとなった)小甚(こじん)ビルをめぐる融資では、トップに「この総会屋に対する融資は大問題になりますよ。不祥事がせせらぎなら止められます。だけど、ビーバーのダムみたいなもので、鉄砲水は止められません。この際、外科治療してきれいにした方がいいんじゃないですか」と生意気にも言ったことがあります。

 このとき、「大蔵省の検査なんてどこでもごまかしてるじゃないか」と言った役員がいた。僕が「どこの会社がごまかしたんですか。こんな融資があっていいんですか」と怒ったら、しゅんとしていました。情けなくて涙が出てきましたよ。ただ、このころは、どんな事態もトップが辞任すれば収まると思っていました。

 〈総会屋事件では最終的に役員ら11人が商法違反で逮捕された〉

 毎日泣かない日はありませんでした。親しい人たちがどんどん逮捕されていくんですから。その年の株主総会は僕が中心にならざるをえませんでした。総務部長も逮捕されちゃったから。それまでのシャンシャン総会をやめにしたから大変でした。事前練習で僕が総会屋のまねをしていろいろ質問を投げかけると、頭取とか役員がみんなおびえちゃってね。「おまえ、なんだ」とか言われたけど、とにかく必死でした。

 株主総会をなんとか乗り切った翌々日の日曜日。午前中に家で1人でくつろいでいたら、知り合いの記者から電話がきて、宮崎邦次(くにじ)元相談役が自殺を図ったと。すぐに病院に駆けつけましたが、夕方になって息を引き取りました。僕は「これは葉隠(はがくれ)だ」と思いました。武士道とは死ぬことと見つけたり。宮崎さんの故郷、佐賀の武士の思想です。自分の部下たちが次々と逮捕されていくことに耐えきれなかったのでしょう。「身をもって責任を全うする決意をいたしました」などと書かれた遺書が残されていました。今でもお墓参りをしますが、本当にすばらしい人で、悲しくつらい出来事でした。(聞き手 平沢裕子)

次のニュース

関連トピックス

あなたへのおすすめ

PR

PR

PR

PR

ランキング

ブランドコンテンツ