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【書評】『ジャパン・ストーリー 昭和・平成の日本政治見聞録』 好奇心の幅が生む面白さ

 ジェラルド・カーティスは1964年にコロンビア大学大学院生として初めて日本を訪れ、以来、日本の政治を客観的に語れる政治学者として高く評価されている。本書では過去半世紀にわたる日本の政治の変遷の評価と、自らの政治見聞の総括がわかりやすく展開されている。

 著者は、自らの日本研究の手法は、伝統的な政治学者よりも政治人類学的手法に近いと考えている。本書はそういう手法で書かれているだけに政治研究書のページをめくるような煩わしさがない。前半の日本の戦後政治の変遷を、歴代首相の著者自らが行ったインタビューを挟みながら、わかりやすく的確にその人となりを偏ることなく冷静に語る。後半には、報道番組のキャスターとして訪れた大震災1カ月半後の被災地で生活する被災者たちをルポする。

 どちらも読者を引き込む上質なノンフィクションを読んでいる自分に気づかされる。

 本書は11年前に出版された本の改訂増補版に位置づけられる。その本のゲラが送られてきて、ジェリーから「日本の一般読者にも分かりやすいタイトルをつけてよ」と言われた。西荻窪に下宿していた60年代に、近所の定食屋で知った「秋刀魚(さんま)の味」の話からゲラは始まっていた。読み終えて迷うことなく『政治と秋刀魚』と書いてジェリーにメールした。「ルース・ベネディクトの日本文化を解説した文化人類学の著作『菊と刀』を連想させる題名でしょう」と書き添えて。

 ぼくとジェリーのもうひとつの「ジャパン・ストーリー」もある。ジェリーを現夫人の翠さんから紹介されたのは72年だ。以来、NYに行けばブロードウェーやジャズクラブに付き合ってくれた。NY大学に行った娘の面倒も見てくれた。ご自宅でも寿司(すし)バーでも、東京の居酒屋でも、ぼくらはよく飲んだ。過去の名作映画を語り合い、新作映画やミステリー本の評価を聞き、互いに好きなジャズ・アルバムなどの話で終始した。ミュージカルの翻訳の仕事では、分からないとすぐメールし、一日も置かずに返信をくれた。

 彼の本が読みやすく面白いのは、こうしたジェリーの政治からエンターテインメントまでの好奇心の幅が広いからだ。(ジェラルド・L・カーティス著、村井章子訳、日経BP社・1800円+税)

 評・高平哲郎(編集者、演出家)

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