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【話の肖像画】前統合幕僚長・河野克俊(64)(11)

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統合幕僚長着任式にのぞむ。安倍晋三首相の信頼は厚く、3度の定年延長を重ねて在任は4年半にわたった=平成26年10月14日(防衛省提供)
統合幕僚長着任式にのぞむ。安倍晋三首相の信頼は厚く、3度の定年延長を重ねて在任は4年半にわたった=平成26年10月14日(防衛省提供)

 ■顔の見える自衛隊であれ

 〈「本日をもって、42年間にわたる自衛官人生の幕を閉じます」。そう始まる退官挨拶で、河野氏は「自衛隊にとって変革の時代」に身を置くことができたのは幸運だったと強調した〉

 4月1日の離任式での挨拶で述べたように、おかげさまで今の自衛隊は国民が最も信頼と好感を寄せる公的機関になりました。しかし、昭和48年に防衛大に入校して以来、厳しい視線といわれなき非難を受けてきたことも事実です。

 東日本大震災をはじめ、災害派遣での自衛隊の活動が評価され、国民から信頼を得てきました。顔の見える自衛隊ということをこれまで講演などで言ってきました。災害派遣は国民とじかに接しますから、自衛隊への信頼感は高まりやすい。

 〈しかし、河野氏は災害派遣だけではなく、自衛隊本来の機能を発揮し、それに対して国民の評価を得ることこそ重要だと考えていた。問われたのは1990年の湾岸危機と、その後の日本の対応だった。平和のための人的貢献の必要性が内外から指摘されながら、国内の強い反対に阻まれた時代である〉

 イラクがクウェートに侵攻して始まった湾岸戦争のころは、自衛隊を海外に出すことについて、世論の反対がかなり強かった時代です。自衛隊が何かしようにも、自衛官に対する漠然たる不信感を感じました。それは国民に自衛官の顔が見えていなかったためだと思います。私は海上幕僚監部の防衛課防衛班の末端の班員でしたが、絶望的な気持ちになりました。

 自衛隊への不信感を拭うには、理屈を言っても信じてもらえないので、行動で評価してもらうしかない。しかし、行動する機会も与えられないと思いました。国際平和協力法案も最初は廃案になりました。

 さらに議論を経て、湾岸戦争後の1991年に、海上自衛隊の掃海部隊をペルシャ湾に派遣することになりました。このときも出発時から帰還のときまで国内には反対運動がありました。

 それでも、法律に基づいて、自衛隊が海外実任務をきちんと務め終えた。そのことへの評価が生まれました。いいにつけ悪いにつけ、自衛隊のことが報道されるようになり、仕事をする自衛官の顔が見えだした転換点だったのではないでしょうか。

 自衛隊は衣食住を自らまかなえる自己完結性を持ち、組織力で災害派遣に対応する強みがあります。だから東日本大震災でも高い評価を得ましたが、自衛隊がいま得ている信頼は、それだけによるものではない。やはり、シビリアンコントロールの下、掃海部隊の派遣以来、積み重ねてきた行動が評価されたのだと思います。

 〈自衛隊を遠ざける文民統制は排し、自衛隊の運用を統幕長が首相に直接、説明する時代となった。安倍晋三首相からの強い信頼も、それを後押しした。ただ、河野氏は謙虚さを忘れてはならないと、離任式で後輩たちに言い残した〉

 信頼は一瞬で崩れ去るものでもあります。「築城十年、落城一日」との格言もあります。(聞き手 石井聡)=次回は6月17日から作家、江上剛さん

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