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【新・仕事の周辺】大森望(書評家、翻訳家) 「本が読めない」状況

 書評家の看板を掲げていて、一番よく訊(き)かれる質問は、「月に何冊くらい読むんですか?」。

 時と場合によって、10冊と答えたり、50冊と答えたりするが(いいかげんですみません)、実際、冊数では自分でもよくわからない。というのも、本を読んで書評を書く仕事は、この稼業のごく一部だから。

 たとえば、収入的に意外と大きな割合を占めるのは、新人賞の予備選考や本選考。賞が集中する時期は、月に50冊分くらい応募原稿を読むこともある。このご時世でも作業が電子化されていない賞が多いので(出版界は意外とローテクなのです)、自宅の寝室に原稿の段ボール箱が積み上がり、生活空間が著しく圧迫されることになる。

 その他、アンソロジーに収録する作品を探すために大量の雑誌を読み漁(あさ)る時期もあれば、小説教室(ゲンロン大森望SF創作講座)の受講生が提出する梗概と短編を毎月読む仕事もある。つまり、小説を大量に読んではいるけれど、本になっていないもののほうが断然多い。そのため、書評用で毎日大量に送られてくる新刊書のほとんどは読めないままで、精神衛生上たいへんよろしくない。

 この“本が読めない”状況に拍車をかけるのが、もうひとつの稼業である翻訳の仕事。英語の本は読むだけでも日本語の本より時間がかかるが、日本語にするとなると当然それ以上。1冊訳すのに最低でも数カ月、長いものだと数年かかる。

 いつもは、比較的スパンの短い書評仕事の合間に、スパンの長い長編の翻訳を入れて、なんとか仕事のバランスをとっているわけですが、今年前半は、劉慈欣『三体』という超大物がいきなり飛び込み、うっかり引き受けたおかげでたいへんなことに。

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