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【倒れざる者~近畿大学創設者 世耕弘一伝・第3部】(5)「不可能を可能にするのが研究だ」近大マグロ誕生秘話

 ところが、熊井はしばらくして青ざめた。「瀬戸内海での昆布養殖の試験」を伝える新聞記事を見たからだ。慌てて直接電話で謝罪したところ、弘一はこう言って励ました。

 「不可能を可能にするのが研究じゃないか」

 この言葉を胸に、熊井は研究に打ち込んだ。なかでも45年に始まったクロマグロの完全養殖研究は困難を極めた。もともと6つの大学・研究機関が参加する水産庁のプロジェクト(3年計画)だったが、第1段階の幼魚の捕獲、飼育から行き詰まり成果のないままプロジェクトは終了。他大学と研究機関が撤退するなか、近大だけが研究を継続。次から次へと課題に直面し、とくに58年以降は実に11年間も産卵さえなかった。それでも近大はあきらめずに32年をかけて遂にクロマグロの完全養殖を達成した。

 熊井はこう語る。

 「とくに産卵のない時期は撤退も頭をよぎりましたが、『不可能を可能にするのが研究』と考えることができたからあきらめなかった。生涯の宝となった言葉です」(松岡達郎)=敬称略

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