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パラオの戦火くぐり抜けたバイオリン 大阪で演奏会へ

バイオリンを弾く若き日の武田茂さん(牧野直子さん提供)
バイオリンを弾く若き日の武田茂さん(牧野直子さん提供)

 第二次世界大戦末期、米軍による激しい空襲に見舞われた南太平洋のパラオ諸島で医師として勤務していた男性が持ち帰ったバイオリンが修復されてよみがえり、プロによる演奏会が20日、大阪府箕面市のメイプルホールで開かれる。長女で元市議の牧野直子さん(70)は「戦火をくぐり抜けたバイオリンの音色を聴いてもらい、あの戦争に思いをはせてほしい」と話す。(張英壽)

 耳鼻咽喉科の医師だった故・武田茂さん。牧野さんによると、武田さんは昭和10年に京都府立医科大を卒業し、初任給で幼い頃から興味があったバイオリンを購入。11年に日本の委任統治領だったサイパン島の病院に赴任し、現地の人たちと楽団を結成した。13年には同じく日本の委任統治領だったパラオ諸島の病院に移り、この頃、新しいバイオリンに買い替えた。

 だが、16年に旧日本軍が米ハワイの真珠湾を攻撃し、19年3月にはパラオが米軍による大空襲に見舞われた。武田さんは取るものも取りあえず帰国の船に乗ったが、このバイオリンは手放さず、78歳で亡くなるまで手元に置き続けたという。

 バイオリンは牧野さんがケースに入れたまま保管していたが、武田さんの演奏する姿を覚えていた牧野さんの長女(39)が昨年春に弾きたいと希望。約30年ぶりにケースを開けると、弦が緩むなどしてそのままでは弾けなかった。知人のプロバイオリン奏者、横山亜美さん(30)に相談したところ、横山さんの夫で弦楽器製作家の富田素行(もとゆき)さん(38)が修復してくれることになった。

 修復には約半年かかった。隙間がいくつもあったほか、木工用接着剤を施した跡も。富田さんは「木工用接着剤は、パラオで直してくれる職人がおらず、武田さんが自分で直すために使ったのでは」と推測する。

 今年2月、横山さんが、箕面市内の高齢者介護予防施設で、修復されたバイオリンを演奏したところ、好評だったことから、本格的なホールでのコンサートを企画。当日はクラシックの名曲が披露され、横山さんが修復されたバイオリン、富田さんがチェロを演奏し、牧野さんがバイオリンと父との思い出について話す。

 横山さんは「こもらずいい音がし、弾いていると武田さんと対話しているような気持ちになる」。牧野さんは「幼い頃、父が弾くバイオリンの伴奏を、ピアノでしたことを思い出す。再び命を吹き込まれたバイオリンをさまざまな世代の人に聴いてもらい、戦争について考えてほしい」と話している。

 午後1時20分開演(午後1時開場)、入場料500円。問い合わせは介護予防施設の「ここ茶(さ)ろん」(072・724・8969)。

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