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ルート・ブリュック展 はかなく懐かしい陶の輝き

 ブリュックを語るとき、彼女の夫でガラス作品などで知られる世界的デザイナー、タピオ・ヴィルカラ(1915~85年)に触れないわけにはいかない。夫婦は互いに最高の理解者であり批評家だった。一緒に旅をし、そこで感じたことを創作に生かしたという。

 例えばブリュックは、イタリアへの旅を糧とし、宗教的テーマの作品を数多く残している。荘厳で深みのある陶の表現は、51年のミラノ・トリエンナーレでグランプリに選ばれるなど国際的にも評価された。

 聖母子を思わせる「母と子」には、幼いわが子への慈愛もにじむ。家族といえば、展覧会名にもなっている「蝶」。蝶の研究者だった父親が亡くなった57年、ブリュックは色とりどりの蝶を四角い器に描き、標本のように大切に並べた。

 驚くのは、60年代ごろから晩年にかけて作風が劇的に変化することだ。彼女が取り組んだのは、小さなタイルを組み合わせた幾何学的レリーフや、数千数万ものピースによる大壁画。具象から抽象へ、豊かな色彩からモノクロームへ。最終的にほとんど白一色の、光と影の表現に至る。なぜ変わったのか、答えは謎。マーリアさんは平然と語る。「彼女はずっと作品の中で物語を語っていた。最初は陶に描いたドローイングで。後半は形や色やパターンを使って」

 フィンランド大統領私邸を飾る最後の傑作「流氷」(87~91年)は、ブリュックが毎夏を過ごしたラップランドの自然を、約2万8千個のタイルで繊細かつ力強く表現したもの。春の訪れとともに、固く閉ざされた湖面の氷が溶けて動き始める。

 氷、水、霧…。変化し続けるもの、不完全なものに彼女は美を見いだしていた。彼女の陶には、そのはかない輝きが永遠に閉じ込められている。

 「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」展は16日まで(3日は休み)。問い合わせは03・3212・2485

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