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【朝晴れエッセー】父からの贈り物・5月31日

 満開の桜の下を歩くと、父の笑顔を思いだす。ござを敷いてあぐらをかき、花見酒を口に含む、日焼けしたやわらかな笑顔。私は5歳少し、昭和30年の、両親と3人でしたお花見だった。

 お酒は軍隊で使った水筒の中に入れられていた。父は、おれは痩(や)せていたから弾に当たらなかったんだと笑うことがあった。生きて帰った喜び。今、仕事があり、妻と娘が目の前にいてくれる幸せとともにどんな思いを一緒に飲んでいたのだろう。

 父は初めての娘に、昭和の昭から昭子と名付けたが、2歳になったある日事故で亡くした。父の悲しみの深さを、私は後に母から聞かされた。次に生まれた私には、昭和の和、和子と名付けた。父は私を見るたびに、かわいい盛りだった姉を思いだしていたに違いない。大切にしてくれる父の顔を見上げて、私が「お父ちゃん」と呼ぶと一層顔をほころばせた。

 その父を悲しませたのは、私の結婚であった。一人娘が長男の男と結婚し、家を出ていく。私は夫になる人に、両親が年を取ったら一緒に暮らしてねと頼んだ。きっとそうするよと彼は言い、約束は守られた。63歳で亡くなるまで、父は孫たちにかこまれ幸せだったと思う。夫の両親もすぐ近くに住んだ。

 時代は昭和から令和になった。お父ちゃん、和の名前をありがとう。親子でお花見した日のあなたの笑顔に守られて、私はこれからも生きていきます。

月岡 和子 69 新潟市西区

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