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【書評】『天皇家百五十年の戦い[1868-2019]』

『天皇家百五十年の戦い[1868-2019]』
『天皇家百五十年の戦い[1868-2019]』

□『天皇家百五十年の戦い[1868-2019] 日本分裂を防いだ「象徴」の力』

■国家の根底 支えるために

 明治維新から150年、日本を根底から支えるために歴代天皇がいかなる戦いを繰り広げてきたかを追う本書。近代化に直面した皇室が古代からのありようと変わらず、どのように日本の運命とともに存在したのか、同時に現在の危機的状況も明らかにする。

 維新後の明治政府や中江兆民、金子堅太郎という知識人たち、そして何よりも明治天皇ご自身も、西欧化=近代化せざるを得なかった日本が、その宿命を受け入れ、その時代時代の空気、流行といった表層と戦いながら、皇室の歴史と伝統をいかに知恵を絞って守ったか-。

 明治の岩倉視察団に随行した佐佐木高行が、維新の立役者だった元武士たちが西欧の制度や思想に触れ、日本も共和制にしなければ生き残れないと思い始めていた回顧談を書いていた。著者はこの核心を神道思想家、葦津珍彦(うずひこ)の『明治民権家の天皇制理論』からの引用で明らかにする。一方、帝国憲法起草にかかわる金子はバークの『フランス革命の省察』を『政治論略』に訳出、慣習に基づく社会秩序の尊重(皇室の必要性)など、明治政府高官に影響を与えた。ルソーの翻訳で有名な中江も、逆に君主制がいかに大切かを書いていた。

 こうした日本人の西欧思想受容の仕方は、福沢諭吉の『帝室論』に見られるように、西欧民主主義を見事に日本社会に適合させた。

 「五箇条の御誓文」で民主主義の理念を表明した明治天皇は、帝国憲法制定でアジア初の立憲国家君主として国のために一生を捧(ささ)げた。そのおぼしめしを継承した昭和天皇は戦争が終わった後も、静かな戦いを続けた。その姿を間近にした上皇陛下は、戦争がなかった平成の御代にも、画一的な歴史観で戦前を全否定する時代の〈流行〉と戦い、国民の幸福と国家の安寧を祈る皇室の伝統を守った。

 令和を迎えてなお、悠仁さま事件や、皇統継承に関し、女性と女系の違いを意図的に混同させる世論調査などもあり、天皇家の戦いは続くことになるだろう。本書は、その戦いを支える国民の理解、自覚を願う書である。(江崎道朗著/ビジネス社・1700円+税)

 評・西村幸祐(批評家、関東学院大学講師)

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