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【朝晴れエッセー】OLの日常・5月24日

 まもなく75歳になる母は、OL生活5年目である。OL-お店レディー。

 大阪の卸売市場で乾物業をしていた父が突然倒れた。病室のベッドで「店はどないなってる」とうわごとを繰り返した父。それからの1カ月、母は店で、海苔(のり)を、干ししいたけを、ひじきを、かんぴょうを無我夢中で売った。

 そして「続けてくれへんか」という父と「お宅の海苔がないと困る」との言葉を真に受けた母は、4年が過ぎた今も、店に通っている。だが長年、自宅でピアノを教えていただけの、どこか世間知らずの母に、なにわの商人たちは、どうも勝手が違うようだった。

 せわしなく、ごたごたした市場に、レースのエプロン姿。しかも深々と頭を下げ、両手でおつりを渡す母に、目をむき、首をかしげていた。

 とはいえいらちな大阪人。「遅いな、何してんねん」「そんなんも知らんのか」と思わず口にする人もいたらしい。

 しかし、耳慣れぬ専門用語や一円一銭単位の価格。得意先の細かい商品の好みまでノートにつけ、完全にそらんじた母に「えらい気ばりはりますな」と言い、親身な助言をくれる人や、若い料理人など、新たな客も来てくれる。

 通勤電車は、まだ慣れないらしいが「A4サイズの夏用バッグが欲しいわ」「スマホケースを変えたの」と話す内容は、若いOLさんのようである。

 後期高齢者?いえいえ、働きざかり、女ざかりです。

山田 佳美 48 岐阜市

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