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【書評】小説家・秋山香乃が読む『いも殿さま』土橋章宏著

『いも殿さま』土橋章宏著
『いも殿さま』土橋章宏著

■人の心信じられる物語

 圧巻のラストをお約束するので、ぜひ読んでほしい一冊だ。

 タイトルにもなっている「いも殿さま」こと井戸平左衛門は実在し、江戸・享保年間に石見国大森と、備中笠岡の代官を務めた人物だ。当時から今に至るまで、現地では「いも殿さま」、あるいは「いも代官」の名で親しまれ、尊敬されている。

 本書は、この「いも殿さま」の実話をベースに、これからも語り継がれるべき人物、井戸平左衛門をコミカルに、時に重厚に、そしてなにより誠実に、子供から大人まで幅広く楽しめるエンターテインメントとしてよみがえらせている。

 本書の大きな特徴の一つが、家族で楽しめる内容に仕上がっているという点だ。

 描かれているのは、江戸時代を通じて最大級の大飢饉(ききん)の中での、餓死との闘いだ。重いテーマだが、より多くの人が親しめるよう、読みやすい文体と言葉選び、ちりばめられたユーモアで、ぐいぐいと最後まで引っ張っていく。そして、ページをめくるほどに胸が熱くなっていくのである。

 作者の人を見る目は温かく、されど厳しい。失敗を恐れて何もしない人たちでは、決して得ることのできないものとは何か。希望とはどこから生まれてくるものなのか。

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