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【理研が語る】次世代の研究スタイル 山田陸裕上級研究員

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 子供が幼稚園での出来事を夕食時に話してくれる。まだ説明がたどたどしくて要領を得ないのだけれど、ときどき立場が逆転する。先日は「今日、おしごと何してたの?」と聞かれ少し困った。その日はプレゼンの準備もしていたので、「うーん、絵を描いたり…字を書いたり…」と言って悩んだあと「絵本…みたいなものを作っていたよ」と言ってみたら納得(?)してくれたらしかった。

 もしかすると読者の中には、「せっかく、好きなことを仕事に、を実現して研究者になったのだから、その日にあった楽しい発見の話をしてあげればいいのに」と思われる方もいるかもしれない。確かに、以前は私も小さな発見を積み重ねる日々を過ごすようになるものだと思っていた。しかし、現実には機器管理や実験準備、プレゼン準備や事務作業など、研究の周りを固めるための日々の方がずっと多い。

 研究というもののスタイルが昔と比べて変化しているのではないだろうか。実際、一つの研究に関わる研究者の数は年々増える傾向にあるという。一人でじっくりと一点を深めていくスタイルから、みんなで協力して隙なく仕上げていくスタイルが主流になっている。それだけ研究というものが複雑化し、大勢で取り組む必要があるようになっているのかもしれない。

 少し前に、元米副大統領のアル・ゴア氏が気候変動に関するスピーチのなかで、「早く行きたいのなら一人で、遠くに行きたいのならみんなで」ということわざを引用しつつ、地球規模の困難を前にして「われわれは、みんなで遠くに、かつ、早く行かなければならない」と付け加えていた。私の研究は気候変動とは関わりないが、この言葉は次の世代の研究スタイル一般にも通じるように思う。今後の科学では、自身の興味を少しわきに置きながらも、みんなで協力して大きなテーマを追求するスタイルがより重要になっていくのではないだろうか。

 とはいえ、研究の醍醐味(だいごみ)はやはり一つの疑問に没頭して考え抜いたり、身体と手を動かして確かめたり、他人との会話でヒントを得たりしながら自分なりの答えに近づいていくという極めて個人的なプロセスにある性質は将来も変わり得ない。これからは、チームがさまざまな立場の個人をより大切にして、個人がチームをより大切にするスタイルがもっと醸成されていくのだろう。子供の質問にも今よりもう少し楽しい答えができるようになるかもしれない。

山田陸裕(やまだ・りくひろ) 理化学研究所生命機能科学研究センター(BDR)合成生物学研究チーム・上級研究員。京都大学化学研究所バイオインフォマティクスセンターを経て博士課程から理研で研究活動を開始。東京工業大学で学位取得(理学)。現在は、情報解析と実験の両面から睡眠研究に従事。

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