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【ビブリオエッセー】ともに歩む悠久の歴史 「ローマ人の物語」塩野七生(新潮文庫)

 「ローマ人の物語」をまた読み始めた。これで三度目である。文庫の刊行が始まったときは主人も元気で私もまだ六十代、わくわくしながら読んだ記憶がある。さりながら文庫本四十三冊、「終焉」まで千三百年近くに及ぶ古代ローマの長い歴史である。読むには読んだが…、というのが正直なところであった。

 二度目は、昨年、八十九歳で亡くなった主人を介護しながらの読書だった。私が付き添えば好きなカメラの撮影旅行にも行くことができた穏やかな段階から、介護度が上がっていく最晩年の数年間である。私を癒やしてくれた読書タイムも主人の「おーい」のひとことで中断された。

 その点、だらだら続く歴史物はこんな状況にもぴったりである。どこで止めてもたいして残念ではない。

 二回目はすっかり忘れていて、初めて読んだような気がして、結構楽しめた。しかしこの寸断されながらの二回目は、主人の病状の悪化で次第に読書どころではなくなり、途中で頓挫した。

 よく知られているローマの歴史だが私は塩野氏の歴史の切り方に魅力を感じている。普遍的な名言も多い。比べるのもおこがましいが私の人生にもカエサルのように、「賽(さい)は投げられた」と決断を余儀なくされたこともあったし、「ブルータス、お前もか」と絶句したこともあった。

 いま、主人が私に残してくれた貴重な時間に感謝しつつ三度目に挑戦している。若かった頃、主人と旅したローマを思い出しながら、悠久の時を再びともに歩みたい。

 大阪府吹田市 山田和(81)

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